03/08/04 (月)
年金の株式運用、与党協議で決断すべき 坂口厚労相
 坂口厚生労働相は3日、相場の低迷で6兆円規模の累積損失を出している年金積立金の株式運用を続けるかどうか、年内にも与党3党で04年年金改革に関する協議の場をつくり、政治の場で決断するべきだ、との考えを示した。また、国民年金の空洞化問題については「制度自体を魅力的にする必要がある」とし、国民年金(基礎年金)に上乗せして年金が支給される国民年金基金制度の充実などを例に挙げた。
 坂口厚労相は同日出演したフジテレビの番組で株式運用について、「(政治的に)きちんと決着したい」と述べ、秋に行われるとみられる総選挙後に与党によるプロジェクトチームをつくり、ほかの年金改革とあわせ、全体的な方針を決める意向を明らかにした。国民年金については「(満額支給でも)月額6万6000〜7000円程度の国民年金だけでは老後生活ができない。だから(保険料を払うのも)やめた、という人もかなりいる。2階部分(基金)をもう少し魅力的なものにするなど知恵を出して、『これで年金は大丈夫だ』と思ってもらえるようにしたい」と持論を述べた。株式を含めた年金積立金の市場運用については、01年末の閣議決定で、04年の年金改革までに再検討することが決まったが、厚労省の審議会は今年3月、「長期的には多様な資産に分散投資したほうが価格変動のリスクを回避できる」として、株式運用を継続するよう結論づけている。与党内には慎重論がある一方、年金資金を株価対策に積極的に活用すべきだとの主張も根強い。

 いかに資産を小分けに分散しようと、株式運用の投機的リスクはその性質上免れないだろう。これは株式市場の不安定な価格変動に国民の生活を委ねるようなものだ。まして年金資産という福祉的性格上、大前提たる安定支給は望むべくもない。国民負担率からして、年金など社会保障負担率がすでに国税負担率を抜いてしまっている。国民年金の財源確保では、年金保険料積立金140兆円からの借用もあげられている中、これらが将来リスクの大きい株式運用に流用するようなことがあれば、そのリスクがさらに増大することは必然だ。バブルが弾けて未曾有の大不況になったことへの反省を、今こそ教訓とすべき時ではないか。責任追求の場面で、株が下がったのが悪いのだと、いけしゃあしゃあと責任転化しかねない無責任な国会答弁が見えるようだ。厚労省が本気で「分散投資がリスクを回避できる」と思っていることが信じられない。今も国民年金未納者への強制徴収云々のニュースが流れている。
 
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