イラク開戦2003
03/04/01 (火)
<イラク戦争>フセイン後暫定政権、米国人が独占か 英紙報道

 英紙ガーディアンは1日、米政府が極秘に進めているフセイン政権打倒後の暫定政権構想について、内閣の首班と23省庁の閣僚をすべて米国人が独占する計画を立てたと報じた。これに対して、イラク人主導の暫定政権づくりを進めてきた亡命イラク人団体などから不満の声が上がっているという。(毎日新聞)
<イラク戦争>米検問所、トラックに発砲 空爆で市民19人死亡

 1日早朝、イラク南部ナシリヤの北方約35キロにあるシャトラの検問所で、米海兵隊が突進してきた小型トラックに発砲、民間人とみられる運転手1人が死亡、同乗の中年男性1人が負傷した。一方、イラク情報相は米英軍の空爆で子供9人を含む市民19人が死亡、約100人が負傷したと発表した。(毎日新聞)
<イラク戦争>空爆で市民19人死亡 米大統領「勝利に近づく」

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典、アンマン春日孝之、ワシントン斗ケ沢秀俊】ロイター通信によると、1日早朝、イラク南部ナシリヤの北方約35キロにあるシャトラの検問所で、米海兵隊が突進してきた小型トラックに発砲、民間人とみられる運転手1人が死亡、同乗の中年男性1人が負傷した。

 米海兵隊員が現場で記者団に語ったところによると、トラックは猛スピードで検問所に近づき、鉄条網に気が付かなかった模様だという。兵士の1人は「自爆攻撃だと思った」と話しているが、男性は2人とも非武装で、トラックも荷物を積んでいなかった。

 また、AP通信によると、バグダッド南西約80キロのカルバラ近郊の町ヒンディーヤでは第3歩兵師団の戦車部隊が31日夜までに中心部を制圧、ユーフラテス川の対岸に撤退した首都防衛にあたるイラク精鋭部隊「共和国防衛隊」を攻撃している。

 米中東軍によると、米英軍は31日午後10時半(日本時間1日午前4時半)ごろ、バグダッド東部にあるイラク五輪委員会ビルなどを精密誘導爆弾で空爆した。同委ではフセイン大統領の長男ウダイ氏が委員長を務めている。

 一方、イラクのサハフ情報相は1日の会見で、イラクで「人間の盾」として活動する外国人が乗ったバス2台が米英軍の空爆を受け、数人が負傷したと明らかにした。現場はヨルダン国境から東約120キロにあるイラク西部の町ルトバ。負傷者の中には米国人が含まれているという。事実とすれば、開戦後に「人間の盾」の活動家が負傷したのは初めて。

 情報相はまた、バグダッド南方バビロンなどで1日、米英軍の空爆で子供9人を含む市民19人が死亡、約100人が負傷したと発表した。

 ブッシュ米大統領は31日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアの沿岸警備隊で演説し、米英軍が「11日間でイラク西部、南部の大半を支配下に置いた」と強調、「我々は日々バグダッドに、勝利に近づいている」と述べた。

 また、米統合参謀本部のマクリスタル作戦副部長は31日の会見で、米英軍がバグダッド南部と北部に展開する共和国防衛隊に集中的な空爆を行い、「かなり弱体化させた」との見解を示した。(毎日新聞)
<イラク戦争>米軍とクルド人組織が連携 トルコは警戒

 【アルビル(イラク北部)藤生竹志】イラク戦争で、北方からの首都バグダッド攻略に向けて、米軍が同国北部クルド人自治区入りして以来、米軍とクルド人組織が連携を強め始めた。だが、隣国トルコはクルド人が北部の油田都市キルクークを制圧することを強く警戒しており、パウエル米国務長官は2日、トルコ入りし、トルコ軍の自治区派兵見合わせを要請する見通しだ。このため、クルド人組織は米軍への支援に慎重で、アフガニスタン攻撃でタリバン政権崩壊を担った「北部同盟」のような役割は期待できないのが現状だ。

 自治区南部では米特殊部隊の支援を受けた「クルド愛国同盟」(PUK)の武装勢力が油田都市キルクーク近郊まで迫っている。愛国同盟のタラバニ議長は28日の記者会見で「我々は米国の了解がなければキルクーク市内には入らない」と明言し、独自の軍事行動を控える姿勢を見せた。見返りとしてトルコは派兵を見合わせているのが現状で、クルド人勢力がキルクークに進攻することがあれば、一挙に情勢は緊迫する。

 北部では30日、イラク軍とクルド武装勢力が対じしている前線のカラクやクシュタパ近郊でB52爆撃機による激しい空爆が行われ、カラクではイラク兵十数人が投降した。米軍が確保したアルビル北東約45キロのハリル飛行場には連日米兵が到着し、軍用車両などが運び込まれている。第173空てい旅団約1000人に加え、今後1週間で2000人程度が加わるという。

 クルド人組織の本音はキルクークや北部最大の都市モスルを支配下に置くことだ。だが、兵力は愛国同盟とクルド民主党(KDP)を合わせても4万程度とみられ、所有する兵器はロシア製のカラシニコフ銃や機関砲だけで、戦車や重火器はない。米軍の支援がなければイラク軍と戦うのは厳しい。クルド民主党の対外関係責任者ゼバリ氏は「米軍に守られている限り、我々はゆったりと構えていられる」と語り、米軍との協調を最重視する姿勢を強調する。

 民主党武装勢力の最高司令官の1人によると、クルド人組織は米国から武器の供与は受けていないという。供与すればトルコを刺激するためだ。米軍は地元の地理に詳しいクルド武装勢力の兵士を道案内に利用しているとみられる。

 民主党のバルザニ議長はドイツ誌「シュピーゲル」に「クルド軍は過去数年で訓練を施し、米国に協力的な軍隊をつくりあげた」と語っている。

 クルド武装勢力が米軍とともにバグダッドを目指すかどうかは不明だが、今後の動きによってはトルコも巻き込んだ紛争に発展する可能性もある。(毎日新聞)
<イラク戦争>米軍、クルド人自治区のイスラム過激派掃討

 米軍とクルド人組織は、対イラク戦争にとどまらず、「アルカイダ」との関係がとりざたされるクルド人自治区南部に拠点を持つイスラム過激派組織「アンサール・イスラム」の壊滅に向けた連携作戦を展開している。掃討作戦は3月20日のイラク戦争開戦後、米軍の空爆を激化させ、少なくとも45人を殺害したとされる。(毎日新聞)
<イラク戦争>米空母キティホーク、連日大規模空爆を実施

 【米空母キティホーク艦上(ペルシャ湾北部)井上卓弥】空母キティホーク当局者は1日、イラク領内に出撃した艦載機53機が31日昼から1日未明にかけ、バスラ南部海上のイラク軍フリゲート艦やバグダッド南部の地対空ミサイル発射装置などを標的に、クラスター(集束)爆弾やレーザー誘導爆弾計72基を投下したと発表した。先月末から連日、爆弾数十個が投下されており、大規模空爆が続いている。

 また、米空母群を指揮する第5艦隊司令部(在バーレーン)は、ペルシャ湾に展開する空母コンステレーションの艦載給油機S3Bバイキング1機が同日早朝、作戦飛行から帰艦後に飛行甲板上でバランスを崩し、海中に転落したことを明らかにした。乗員2人は救出され無事という。(毎日新聞)
<イラク戦争>アラブ連盟事務局長、クウェートを暗に批判

 アラブ連盟(22カ国・機構)のムーサ事務局長は1日付のアラブ紙「アッシャルク・アルアウサト」のインタビューで「(イラク戦争を)アラブのいくつかの国が望み準備に加担した。もしアラブ諸国が結束していれば戦争は避けられた」と述べ、名指しこそ避けたが、米国に出撃基地を提供しているクウェートを暗に批判した。(毎日新聞)
<イラク戦争>南部のウムカサルにクウェートから水パイプライン

 イラク戦争で住民に深刻な水不足が起きていた同国南部の港湾都市ウムカサルに31日、隣国のクウェートから飲料水を供給するパイプラインが開通した。ウムカサルを制圧した英軍が人道支援の一環として建設したもので、1日あたり50万リットルの搬送能力を持ち、住民の危機的状況の改善につながると期待されている。(毎日新聞)
<イラク戦争>米、検問無視の車に発砲 女性ら7人死亡

 【アッサイリヤ基地(カタール)田中洋之】米中東軍司令部は3月31日、イラク中部のナジャフ近郊の検問所で同日午後、停止命令を無視した車に米兵が発砲し、乗っていた女性と子供の計13人のうち7人が死亡、2人が負傷したと発表した。4人は無事だった。米兵は最初、車のエンジンを銃撃したが、なお停車しなかったため車内に発砲したという。

 ナジャフ近郊の米軍検問所では同月29日、車で近づいてきたイラク兵による自爆攻撃で米兵4人が死亡し、米軍は自爆攻撃への警戒を強めていた。13人の身元などは不明だが、多くの女性や子供が犠牲になったことで、米軍への反発がさらに強まりそうだ。

 また米軍は31日、バグダッド南方約80キロのカルバラ近郊の町ヒンディーヤで、イラクの共和国防衛隊と激しい地上戦を展開、AP通信によると、少なくとも35人のイラク兵が死亡した。

 ナジャフなど二つの町でも米軍とイラク軍が衝突し、約100人のイラク兵が死亡した。(毎日新聞)
<イラク戦争>英軍、バスラ突入の電撃作戦開始 イラク兵捕虜に

 イラク南部のバスラを包囲する英軍の地上部隊が市内に突入し、イラク軍将兵を捕虜にする電撃作戦を開始した。英軍は地元住民の協力を得て市街戦を避け、南部の要衝を掌握したい考えだ。バスラは人口150万人を抱えるイラク第2の都市。英軍は映画「007」シリーズにちなみ突入作戦を「ジェームズ作戦」と呼んでいる。(毎日新聞)
<イラク戦争>米英軍作戦計画 4月中旬にも首都に拠点

 【ワシントン藤原章生】イラクの首都バグダッド攻略をめざす米英軍は、首都南方に展開するイラク最精鋭の共和国防衛隊をバグダッド市内に後退させた後、4月中旬にも同市の南西部境界付近に軍事拠点を築き、15万〜17万人の兵力でバグダッドを包囲する計画を立てていることが31日、明らかになった。米軍の作戦に精通する米政府筋が毎日新聞に語った。

 同筋によると、想定されている作戦計画は、(1)バグダッド南方約80キロのカルバラにいる共和国防衛隊を一掃(2)バグダッド南西端に拠点を設置(3)米兵15万〜17万人による包囲網を築く(4)空陸の攻撃によって包囲網を徐々に狭め、フセイン大統領とその子息らイラク政権幹部の捜索作戦に入る――との手順で行われる。

 カルバラ南方の米陸軍は現在、補給上の問題で進撃を停止している。軍事関係者によると、米軍は補給完了が見込まれる4月初めにも先行部隊をカルバラ方面に進軍させ、早ければ4月中旬にバグダッドに拠点を築きたい意向という。

 軍事拠点には、砲兵隊を派遣しロケット砲などを装備する。地対空ミサイル「パトリオット」の設置も検討している。現在ペルシャ湾岸に向かっている陸軍第4歩兵師団のうち、包囲作戦に参加する兵員は、輸送機でクウェートやイラク領内に派遣し、バグダッドに直行させる方針だ。

 バグダッドは「拠点設置後約10日間」で包囲を完了する計画だが、イラク軍の抵抗によっては、やや延びる可能性がある。15万〜17万の兵力を4月中旬までに、バグダッド近郊に動員できるか疑問視する見方もある。

 米軍はすでに、バグダッドに投入している特殊部隊に、イラク政権幹部直撃のため、爆弾誘導用のレーザー発射装置などを設置させている。だが直撃は容易でなく、政権幹部を殺害または捕そくするためには、「市街に兵を突入させる以外、現時点では手がない」と軍事関係者はいう。

 軍事アナリストらの推定では、バグダッドで市街戦となった場合、米兵数千人の戦死に加えイラク市民多数の犠牲者が見込まれる。

 軍事作戦の日数について米政府は当初から「開戦から少なくとも50日かかる」とみていた。包囲網を狭める段階でのイラク側の抵抗内容は未知数で、長期戦になる可能性も指摘されている。

 イラク国内と周辺に駐留する米軍は約22万5000人、英軍は約3万人だが、イラク領内に限ると米英軍合わせて12万5000人の規模。米軍は10万〜12万、英軍は3万の増派を計画している。(毎日新聞)
<イラク戦争>アーネット記者を解雇 国営テレビ出演で米NBC

 米NBCは31日、ピーター・アーネット記者を解雇したと発表した。同記者はCNN記者時代、湾岸戦争(91年)でバグダッドからの報道を続け、世界的に名を知られるようになった。アーネット記者がイラク国営テレビのインタビューに対して、米国の戦争計画は失敗だったと発言したことが問題視された。(毎日新聞)
<イラク戦争>パウエル対ラムズフェルド ドクトリン競争に注目

 【ワシントン中島哲夫】イラク戦争で急進撃を続けた米軍が停滞に陥ったことで、30日にはラムズフェルド国防長官(70)が大規模兵力の投入を拒否したせいだという「疑惑」が急浮上し、長官は釈明に追われた。逆に「圧倒的な軍事力」による必勝理論で知られるパウエル国務長官(65)の株が上がり、両者の「ドクトリン競争」が関心を集めている。

 パウエル長官は91年の湾岸戦争を統合参謀本部議長として指揮した。戦後、「戦争は最後の手段」「目的を限定し、圧倒的な兵力を投入する」などの原則を公表し、パウエル・ドクトリンとして有名になった。

 一方、ラムズフェルド長官は若くしてフォード政権の国防長官を務めた政治エリート。昨年10月7日の記者会見では、パウエル・ドクトリンを「実際には(レーガン政権時代の国防長官が表明した)ワインバーガー・ドクトリン(の亜流)だ」と述べ、時代遅れだと事実上決め付けた。

 また、同12月4日のアラブ圏メディアとの会見では「ラムズフェルド・ドクトリン」はブッシュ・ドクトリンそのものだと解釈できる発言をし、敵対国家やテロ組織への先制攻撃を容認する新ドクトリンの考案者だという自負を示した。

 ブッシュ・ドクトリンの特徴の一つは、世界のどこへでも軍を迅速派遣し、ハイテク兵器で敵を撃滅するという「軽い、速い、新しい」志向だ。イラク戦争は同ドクトリンを初めて発動したケースであり、新路線を試してみたかったとしても無理はない。

 ただ、実際にはフランクス中東軍司令官の要請を受け入れ、25万人を超える兵力をイラク周辺に展開させてから開戦に踏み切っており、新旧折衷型の作戦になった。

 しかし、史上まれな快進撃は補給線が延び切って限界を示し、精密誘導兵器で猛爆撃してもフセイン政権は崩壊しない。作戦計画は長期化にも対応できる「旧」の部分を含んでいるため破たんを免れているが、「新」の方は失敗という印象だ。

 ラムズフェルド長官は30日、ABCテレビの番組で、イラク南部バスラなどでシーア派イスラム教徒の政権離反が進まない理由について、湾岸戦争の際に蜂起したら「米軍が去ってしまった」ためにフセイン政権に虐殺された経緯を挙げた。

 ドクトリン競争での形勢不利にいらだち、12年前にバグダッド進撃に反対したパウエル長官をあてこすった発言のようにも聞こえる。(毎日新聞)
<イラク戦争>米政府とシリア、イランの対立深まる

 【アンマン小倉孝保】米政府高官がこのところ、イラクとの関係についてシリア、イランを名指しで批判、米国と両国政府との対立が深まっている。イラク戦争で民間人の犠牲者が少なくとも400人を超えたとされ、両国など中東の民衆の間で反米感情が急速に高まっている。米国は「テロ支援国」として指定した両国の政府に対し「国民の反米的態度を放置すれば、イラクの次の標的になる」と警告を発したものとみられる。

 米国のラムズフェルド国防長官は3月28日、記者会見で、イラク軍を支援するため、夜間戦闘用暗視ゴーグルなどの軍需物資がシリアからイラクに運ばれていると不満を表明。

 同長官はまた、テヘランを拠点にするイスラム教シーア派のイラク反体制組織「イラク・イスラム革命最高評議会」(SCIRI)」の軍事部隊数百人が越境し、イラク南部に入ったと指摘、イラン政府がこれを容認していると批判した。軍事部隊のイラク入りが事実ならば、同国南部のシーア派住民への支援の可能性があるが、真相は不明。長官は「米英軍にとって障害になりかねない」と非難しており、イラク南部へのイランの影響力が強まることをけん制したものとみられる。

 パウエル長官はまた、30日の講演で、「イランは大量破壊兵器を保有したいという願望を捨て去るべきだ」「シリアはテロ支援を続けるかどうかという危険な選択と直面している」と改めて両国をけん制した。

 シリア政府は即座に、「指摘は根拠がない」との声明を発表、ハラジ・イラン外相も30日、「イラクでフセイン政権が崩壊しても、米国によって作られたイラク政府は承認しない」と米政府の主張に反論した。

 これらの問題について、あるアラブ外交筋は「十分ありうる話だが、米政府はこれまで、大目に見てきた」と指摘。その上で、今回の戦争でイスラム教徒の犠牲が続出し、各地で反米デモが激化していることを踏まえ、同筋は「反米感情の拡大が危険なレベルに達している。これ以上、反米の波が噴出することは容認できないと中東諸国にメッセージを出した」とみる。

 シリア、イランは中東の中でも比較的、言論統制が厳しい国だ。両国をはじめ中東各国は、圧倒的な軍事力を背景に、米国が「中東の民主化」を旗印に掲げ、親米化を図ろうとしているとの警戒心を抱く。アラブ有力紙「アルハヤト」のコメンテーターは「中東の民衆は、米国のイラク攻撃の本当の狙いはイスラエルの安全保障だったと感じている」と指摘する。シリアは湾岸戦争(91年)後、米国に接近、イランもハタミ大統領の初当選(97年)を受け、米国との関係改善機運が出ていたが、今回の確執激化を受け、逆に亀裂はが鮮明となった。(毎日新聞)
<イラク戦争>難民用テント積んだ政府専用機がアンマン到着

 【アンマン小倉孝保】イラク難民のために日本政府が用意したテントが31日、政府専用機でヨルダン・アンマン国際空港に運び込まれた。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の要請に基づくもので、政府専用機からテント160張り(1600人分)が降ろされた後、小畑紘一駐ヨルダン大使がUNHCRアンマン事務所のスティーン・ブルネー所長に目録を手渡した。

 現在、ヨルダンにイラク難民は流入していないが、戦況が激化して難民が流入した場合に利用されるという。(毎日新聞)
<イラク戦争>劣化ウラン弾 湾岸戦争の後遺症に悩む市民に衝撃

 【アンマン小倉孝保】米軍当局はイラクの首都バグダッドの爆撃で、劣化ウラン弾を使用したことを認めた。どの程度の劣化ウラン弾が今回のイラク戦争で使用されているのか、実態は不明だ。しかし、湾岸戦争後のがん多発などの後遺症に悩むイラク市民や医師たちは、大きな衝撃を受けている。

 イラク南部のバスラ・サダム教育病院に入院していた女子中学生、デラルさん(16)は昨年7月、脚の痛みに気づいた。次第に脚を引きずるようになり、骨がんと診断された。医師団は湾岸戦争の際に使用された劣化ウラン弾の後遺症とみている。

 大きく腫れ上がった左足のひざを医師に見せながらデラルさんは「将来は学校の先生になりたいけど、これでは無理かな……」と不安な表情。付き添っていた母(46)は「娘をこんな病気にしておいて。また、戦争を繰り返そうとしている」と憤った。

 イラク南部バスラの小児婦人科病院でジャセム医師(32)は「戦争の被害は一時のことではない。その後、将来にわたって罪のない人たちを苦しめる」と語り、同僚の医師たちも口々に「米軍には劣化ウラン弾は使ってほしくない」と話す。

 バスラでの病院で取り扱った患者数は10万人当たり88年は11人だったが、98年75人、01年116人と急増。また、死者数は88年の34人から98年428人、01年603人と17倍となった。同じ家族内でがん患者が複数以上同時に発生したケースが約50件あり、医師の経験則からすれば「極めて異常な状況」という。

 一方、米軍当局は26日の記者会見で、英米軍が劣化ウラン弾を使用していることを認めながらも「劣化ウランの使用は極めて少数」と説明した。さらに、「人体への影響は攻撃対象の極めて近くにいる場合だけ」と、一般住民への影響の可能性を否定し「科学的に(劣化ウラン弾とがんの発生などとの)因果関係が証明されていない」との立場を説明した。

 世界保健機関(WHO)は01年1月から、イラク保健省と協力して劣化ウラン弾の影響についての本格的な調査に入った。しかし、調査は進まず、イラク側は「米国の圧力でWHOが調査に消極的になった」(ムバラク・イラク保健相)と批判していた。

 サダム教育病院のがん治療センター長、ジャワッド・アリ医師(58)は「因果関係がはっきりしないとしても、その可能性が捨てきれないなら、これ以上劣化ウラン弾を使用する愚は犯すべきでない」と訴えている。

◇「民間人の被害拡大」と批判の声

 劣化ウラン弾の使用は「第二の対人地雷」と言われるクラスター弾の使用とともに、「民間人の被害が拡大する」と国内からも非難の声が強まっている。

 劣化ウランは、ウラン235を原子炉や核兵器に使うために濃縮する過程で生じる「核のごみ」で、他の金属に比べて比重が高い。貫通力に優れ着弾時に発火するなど破壊効果が高い。91年の湾岸戦争で米軍が使用した。99年のコソボ紛争でもNATO(北大西洋条約機構)軍が使用したが、使用後数年たって兵士や付近住民にがんや白血病などのさまざまな健康被害が報告され、劣化ウラン弾との因果関係が指摘される。

 今回のイラク戦争では今後想定される戦車同士の戦闘などに多用される可能性がある。

 コソボ紛争などでの被害を現地調査したNGO(非政府組織)「ピースボート」の中原大弐共同代表は「戦闘で使われれば、劣化ウランは砂ぼこりに交じって空中に舞い、兵士だけでなく民間人の体にも入る。米軍は民間人は攻撃しないと言っているが、戦争が終わって数年後に民間人に影響が出てくる。使用に強い怒りを覚える」と話す。

 広島県原水協と同県被団協は27日、ブッシュ米大統領あての抗議文を米国大使館に送付。この中で「劣化ウラン弾は人体に与える影響が極めて大きい。このまま進めば、イラクの化学兵器使用、米国の小型核兵器使用という最悪の事態を招きかねない」と訴えている。 【宮澤勲】

◇劣化ウラン弾

 原子炉や核兵器に使用するため、天然ウランを濃縮処理する過程で派生する核廃棄物の劣化ウランを利用した弾丸。比重が大きく貫通力に優れるため、米軍は湾岸戦争で大量に使用した。推定で300トンが使用されたという。危険性が指摘されており、米国防総省も98年8月、湾岸戦争に従軍した兵士らの証言を基に劣化ウラン弾の影響について調査報告を行い、その潜在的な危険性を認めた上で、すべての米兵に危険性を知らせる必要があると指摘した。(毎日新聞)
<イラク戦争>自爆攻撃で情勢混とんの兆し ハマスなど背景か

 米軍に対するイラクの自爆攻撃が起き、アラブ・イスラム各地から義勇兵が集結する動きが出てきたことで、イラク戦争は混とんとした情勢の兆しを示し始めた。イスラエルのテロ専門家は、自爆攻撃についてパレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」などがイラクを鼓舞している背景があると見る。(毎日新聞)
<イラク戦争>湾岸戦争参戦のエジプト軍元参謀総長に聞く

 【カイロ城島徹】湾岸戦争(91年)当時、多国籍軍として対イラク戦に参戦したエジプト軍の元参謀総長モハマド・アリ・ビラル氏(67)が30日、毎日新聞のインタビューに応じ、イラク戦争の現状を分析した。ビラル氏は米軍事作戦の誤算を指摘する一方で、住宅地への空爆は抗戦の意思をそぐための米軍戦術との見方を示した。

 ――戦況をどうみるか。

◆米国は湾岸戦争の経験から、イラク南部地域でシーア派の反政府勢力の蜂起を予想し、それに乗じてバスラなどの都市を攻略できると考えていた。ところが、予想外の抵抗を受ける展開となった。開戦7日目にようやくイラク最南端の港湾都市ウンムカスルを制圧した。大誤算といえる。

 ――首都攻略のシナリオはどうなるのか。

◆バグダッド進攻は慎重にならざるを得ない。湾岸戦争では制圧した先々で新たな基地を構えたが、今回はできない。クウェート国境からバグダッド南方の前線まで補給路が500キロもあり、資材や燃料の運搬が難しい。基地の設営は安全性を優先させるのが軍の鉄則だ。ここ数日間は地上部隊は動かさず、バグダッドなど都市部への空爆が主体となるだろう。

 ――イラク軍の戦力をどうみるか。

◆湾岸戦争でイラクは戦力を過信して痛い目にあった。今回は低い戦闘能力を自覚して地方での交戦を避け、都市防衛を主体にしている。経済制裁の影響で勢力低下が著しく、戦車は旧ソ連製の1500台程度。数種類あるミサイルも性能は極めて低い。生物・化学兵器も所持していないはずだ。

 ――米英軍の戦いで注視しているのは。

◆米軍は政府や軍施設以外も実は標的にしている。市場や住宅地の空爆は誤爆ではなく、徹底抗戦をさせないための「イラク国民へのメッセージ」として意図的に行っていると思う。またラムズフェルド米国防長官がイランとシリアをイラク領内に武装勢力を入れていると非難した。名指しされた両国は当然否定する。「あなたの国をどこも支援していない」とのメッセージを隣国から送らせ、イラクの孤立感を深めさようとしている。

 ――今後の展開は。

◆4月半ばまでに戦争が終わらないと、米国を取り巻く情勢は複雑になる。国際社会は再び国連に解決を委ねようと動き出すかもしれない。私自身の戦争体験も踏まえて言えば、戦争を始める前に掲げられる大義が本当のことはない。本音というのは政治家の背後に隠れているものだ。

  ◇  ◇  ◇

 モハマド・アリ・ビラル氏 湾岸戦争では多国籍軍で参戦したエジプト軍のトップとして、サウジアラビアを防衛する「砂漠の盾」作戦とクウェート解放を目的とした「砂漠の嵐」作戦に加わった。(毎日新聞)
<イラク戦争>「湾岸戦争より短期」 パール前国防政策委員長

 【ワシントン佐藤千矢子】リチャード・パール前米国防政策委員長は30日、カナダCBCテレビの番組で、イラク戦争の見通しについて「おそらく湾岸戦争よりも短期で終わる」と述べ、約6週間続いた湾岸戦争に比べて短期決戦に終わるとの見方を改めて示した。

 パール氏は「歴史的に見れば、素早い戦争になるだろう」と強調し、米兵の死傷者数について「数千人とか、数百人台後半にはならないと思う」と述べた。

 イラク戦争の「影の計画立案者」と言われるパール氏は、戦争長期化が必至の情勢となるなか、ラムズフェルド米国防長官とともに「イラク側の抵抗を過小評価していたのでは」などの批判にさらされており、これに反論した形だ。

 パール氏は、アラブの武器商人や国際通信会社との不透明な関係をめぐる騒動の責任を取って27日に委員長を辞任したが、国防政策委員にはとどまっている。(毎日新聞)
<イラク戦争>バグダッド攻略 米「準備整うまで行わぬ」

 【ワシントン中島哲夫、藤原章生】マイヤーズ米統合参謀本部議長は30日、米NBCテレビに出演し、イラク戦争の最大の焦点であるバグダッド攻略作戦について「準備が整うまで何もしない」と明言した。米英軍は現在、首都を守るイラクの精鋭部隊「共和国防衛隊」に集中的な空爆を加えており、同防衛隊の戦力を大幅にそいだ上で地上軍を進撃させる方針を示したものだ。

 米メディアによると、同議長はバグダッド南方に展開する共和国防衛隊「メディナ師団」の戦力を半減させたと語った。

 一方、イラク中部ナジャフで29日、4人の米兵が犠牲になった自爆攻撃は、「カミカゼ(旧日本軍の特攻隊)スタイル」と報じるテレビ局もあるなど、米国内に衝撃を与えている。だが、ラムズフェルド国防長官はABCテレビで「テロリストはどこでも攻撃を仕掛け、完全には防げない。だが、イスラエルや北アイルランドと同様に、テロリストが勝利することはない」と強調した。

 また、マイヤーズ議長も「作戦や手順を調整しなければならないが、対処できる」と戦略的に重要な意味は持たないとの認識を示した。ただ議長は「兵士の衝撃は大きい」とも漏らしており、自爆攻撃を軽視はしていないようだ。

 南部バスラやナシリヤでは、自爆攻撃阻止を目的に、米英軍の兵士が人家を細かく調べたり、住民のボディーチェックを行っているという。(毎日新聞)
<人道支援物資>開戦後初めてクルド人自治区へ送る ユニセフ

 国連児童基金(ユニセフ)は30日、イラク戦争開戦後初めて、トルコからイラク北部のクルド人自治区へ陸路で人道支援物資を送った。ロイター通信がトルコ南東部シロピのユニセフ当局者の話として伝えた。

 送ったのは水の浄化装置や医薬品などトラック2台分で、イラクの石油売却代金を食料や人道物資の購入に充てる国連の「石油・食料交換計画」の一環。同当局者は「イラク北部は危機的な状況。食料貯蔵が減り、燃料が値上がりしているとの報告を受けている」と述べたほか、子供と妊婦の栄養状況が悪化していると説明した。

 ユニセフは、今回の輸送をテストケースとしており、今週前半には約40台のトラックで自治区に物資を届ける方針。トルコは開戦直前から難民流入などを警戒し、イラク国境を原則的に閉鎖していた。(ディヤルバクル(トルコ南東部)共同)(毎日新聞)

<イラク戦争>米軍ヘリが離陸直後に墜落、3人死亡

 カタールの米中央軍司令部は30日、米海兵隊のUH1ヘリコプターがイラク南部で墜落し、搭乗していた海兵隊員3人が死亡、1人が負傷したと発表した。

 ロイター通信によると、ヘリは離陸直後に墜落した。同司令部のこれまでの調べでは、墜落原因はイラク軍の攻撃によるものではないという。(ワシントン共同)(毎日新聞)
<イラク戦争>米大統領、首都攻略予定通り推進 長期戦の声も 

 米中東軍のフランクス司令官は30日、「戦争がどのくらい続くかは誰も分からない」と述べ、長期戦の可能性を強く示唆した。フーン英国防相も同日、長期化を示唆した。補給不足やイラク側のゲリラ攻撃などで作戦に支障が出ていることが背景にあるとみられる。だが、ブッシュ米大統領は29日、幹部会議を開き、予定通りバグダッド攻略を積極推進する方針を決めた。これに対し、ラマダン・イラク副大統領は29日の会見で、バグダッド南方のナジャフ近郊で米兵4人を殺害した自爆攻撃に言及し、今後も自爆攻撃を継続する方針を強調した。

 【アッサイリヤ基地(カタール)福島良典】米中東軍のフランクス司令官は30日、記者会見で、イラク戦争の長期化に言及するとともに、米内外から批判が出ている地上部隊の早期投入に関して、イラク南部の油田をフセイン政権の破壊計画から守るのが目的だったと反論した。

 米誌ニューヨーカーは開戦を急ぐラムズフェルド米国防長官が作戦立案者から提出されていた増派要請を再三、退けていたと報じた。これに関してフランクス司令官は「地上戦の開始前に増派を要請したことはない」と否定した。

 また、空爆開始からわずか半日後に地上部隊を投入したことについて司令官は「(フセイン)体制がイラク南部の油田を破壊しようとしているとの証拠を入手していた。破壊阻止の作戦目標は私が決断を下した」と述べた。

 米英軍はイラクのゲリラ戦法に悩まされ、脆弱(ぜいじゃく)な補給路などの難題を抱えているが、司令官は戦果を列挙、「(作戦の)現状は特筆すべきものだ。イラク国民は解放者を歓迎するはずだ」と強調した。

 米英軍は29日から30日にかけて、バグダッドの共和国防衛隊に加え、ゲリラ部隊「フェダイン・サダム」の訓練基地、大統領宮殿などを空爆したと明らかにした。米空軍幹部はAP通信に、米英軍が空爆の75%をバグダッド周辺の共和国防衛隊に集中していると明らかにした。

 一方、英国のフーン国防相は30日、BBCラジオで、イラク戦争で展開している約4万5000人の英軍部隊について「紛争が何カ月も長引くならば、彼らを交代させなければならない」と述べ、戦争の長期化を視野に入れていることを明らかにした。

 【ワシントン中島哲夫、藤原章生】ロイター通信は30日、バグダッド南方に展開している米軍部隊の兵士らが少なくとも2週間はざんごうを掘って待機せよとの命令を受けていると伝えた。同通信の報道は、待機命令を受けたのはバグダッドの南方約100キロに迫った部隊を含む複数の部隊という。

 軍事情報筋によると、米軍はもともと市街戦によるバグダッド攻略には50日間程度を要するとみていたが、ブッシュ政権は市街戦開始以前の終戦を期待していた。だが、30日付の米紙ワシントン・ポストは、一部の米軍事当局者がイラク戦争の決着は夏までずれ込むと見ていると伝えた。

 だが、ラムズフェルド米国防長官は30日、米ABCテレビなどで「戦闘の一時停止や停戦の計画はない」と強調した。マイヤーズ米統合参謀本部議長も米CBSテレビで、バグダッド攻略の具体的方法については「柔軟性のある計画を立てている」と語った。議長はまた、イラク側が継続方針を示した米軍への自爆攻撃について「十分対処できる」と語り、軍事計画に大きな変化がないことを強調した。

 【アンマン春日孝之、竹之内満】イラクのラマダン副大統領は29日の会見で、バグダッド南方のナジャフ近郊で同日行われた自爆攻撃について、直接的な関与には言及しなかったものの、「日常的な軍事作戦だ。我々は侵略者を殺害するため、あらゆる手段を使う」と述べ、「これは単なる始まりに過ぎない」と警告した。

 また、イラク軍報道官は30日の会見で、「すべてのアラブ諸国から総勢4000人以上の義勇兵がイラク入りした」と述べ、イラク軍と義勇兵が今後、自爆攻撃をエスカレートさせると警告した。サハフ・イラク情報相は同日、イラク側が同国南部・中部で米軍の攻撃ヘリ「アパッチ」など2機を撃墜、米兵の乗員2人を殺害したと述べた。一方、クウェートの米軍基地にトラックが突入、米兵15人がけがをした。犯人は不明。(毎日新聞)

<イラク戦争>バグダッド攻防の焦点 米軍の補給作戦の現状追う

 イラク進撃中の米地上部隊は首都バグダッドの南約80キロのカルバラ付近まで到達しているが、前線に食料や燃料、弾薬などを供給する補給線の確保がイラク軍のゲリラ攻勢などで困難になり、作戦の大きな障害となりかねない情勢だ。バグダッド攻防の成否の焦点に浮上している米軍の補給作戦の現状を追った。

 バグダッドの南のナジャフやナシリヤ、サマワに展開している地上部隊は食料や燃料不足で兵士の食事が1日1回に減らされているほか、燃料の節約のため装甲車の使用も制限されている。AFP通信によると、イラク中部では食事を制限され空腹の米兵に、イラク人が羊や鶏肉、卵などを分け与えるケースも出ているという。

 補給線の確保が困難になった理由は、地上軍が予想外に速いペースで進撃し、補給のスピードが追いつかないことに加え、イラクのゲリラ攻勢による隊列の襲撃などがある。南部ナシリヤで23日、米陸軍第3歩兵師団の整備補修を担当する「507歩兵中隊」がゲリラ部隊「フェダイン・サダム」の奇襲を受け米兵9人が死亡、12人が行方不明となり補給線のもろさが表面化した。その後も断続的にゲリラ攻撃を受けており、輸送が困難となって引き返すケースも出ている。また砂嵐で補給部隊を先導する監視用の武装ヘリが飛べず、空中支援なしで移動を余儀なくされているケースもあるという。

 このため米軍は、ナシリヤ近郊で制圧した飛行場に29日、第82空てい師団を配置し補給部隊の安全確保に乗り出した。米軍はこの飛行場を「ブッシュ国際空港」と名付け、補給基地とする考えだ。

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 今回のイラク攻撃で米軍は、クウェートのシュアイバ港に陸揚げした必要物資を前線まで陸路輸送している。カルバラまでの距離は約500キロに及ぶ。隊列にはトラックやタンクローリー、クレーン車などが加わる。スピードは遅く、1日の走行もせいぜい200〜300キロのことが多い。隊列が1キロにも延びることがあり、迷子になる車もある。

 イラク国内には約10万人の米兵が展開している。この中でも約1万6000人規模の米第3歩兵師団の維持だけで膨大な物資が必要だ。暑い砂漠地帯で従軍する兵士には食料とともに水分が欠かせない。1師団で1日当たり100万リットル以上の水が使用される。浄水器を持っている部隊もあり、補給物資が届かないためユーフラテス川から水を取り、飲み水を作っているという。

 また、戦車や装甲車、ヘリコプターなどの燃料で1日当たり230〜285万リットルを消費。特に攻撃ヘリ「アパッチ」1機で1時間当たり400リットルのディーゼル燃料を使用する。このほか、進撃に伴いイラク市民に与える人道物資や捕虜の輸送も必要になりつつあり、大きな負担となっている。

 補給部隊は作戦部隊と異なり、イラク軍のゲリラ攻撃に対抗する十分な武器を持っていない。天候や道路の状況も極めて悪い。米軍関係者は「500キロにも及ぶルートを車列が移動するのは大きなリスクを伴う」と指摘する。特に約1万9000リットルの燃料を積む巨大なタンクローリーは側面攻撃の絶好の標的となる。

 米中東軍のレニュアート作戦部長は29日の会見で、「補給ルートへのイラク軍の攻撃は続いているが、各部隊への兵たん支援は止まっていない。必要物資も十分な量を確保している」と語った。また、前線部隊の進軍が一時停止しているとの指摘について「我々は空爆や地上からの砲撃を続けている」と作戦が順調に進んでいると強気の姿勢を変えていない。 【アッサイリヤ基地(カタール)田中洋之】

 ▽軍事外交評論家、松井茂イラク情報センター理事長の話

 イラク戦争が長期化すると見られる中、米軍が今後の戦いを維持する上で大きな問題となるのは、水や燃料、食料の補給だ。4月、5月に入ると、イラクは急に気温が上がり、日中の気温が50度近くにもなることもある。現在、米兵は1日当たり1・5リットルのペットボトル3本の水が配給されている。欧州などの戦場であれば、これで十分だが、夏場のイラクでは10本(15リットル)は必要だ。

 また、乾燥した砂漠の暑さは、食欲を増進させる。現在、補給の遅れから1日1食に制限されている部隊があるというが、十分な食事ができないと戦意の喪失につながりかねない。

 実際の補給方法はトラックなどによる陸上輸送が最も効率がいい。空輸では、大きな飛行場を確保せねばならない。空中からのパラシュートでの降下では落とせる量に限りがある。

 だが、イラク軍は、ゲリラ戦により陸上の補給線を断ち切る作戦を考えているはずだ。米軍は4月以降、「デジタル師団」と呼ばれる第4歩兵師団、米陸軍最強の第1機甲師団を投入する予定で、補給量はこれまでの3、4倍に増えるとみられる。また、作戦展開に沿って前線が細分化すればするほど、途中で、自爆テロなどにさらされる可能性が高くなり、補給は難しくなる。(毎日新聞)