イラク開戦2003
03/03/30 (日)
米、拠点を集中空爆 宮殿や情報機関など
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 米英軍は29日から30日にかけて、バグダッドでイラク精鋭の共和国防衛隊の拠点などを標的に開戦以来最大級の空爆を行った。米英の前線部隊では補給難や兵員不足への懸念が強まっているが、ブッシュ政権はあくまでバグダッドの早期攻略を目指す方針。共和国防衛隊への集中攻撃はその準備作戦とみられる。

 ペルシャ湾に展開中の米空母キティホーク当局者は30日、バグダッド市内と南部に一日としては最多となる爆弾52発を投下したと発表した。またCNNは、米英軍が制圧したイラク領内の滑走路が初めて出撃に使われたと報じた。南部バスラや北部モスルでも大規模空爆があった。

 米中央軍によると、バグダッドで空爆したのは、大統領宮殿や情報機関、民兵訓練所など。標的になった宮殿はフセイン大統領の次男クサイ氏が使用する施設とみられる。

 首都を防衛する共和国防衛隊にも激しい空爆があり、米空軍幹部は「空爆の4分の3は共和国防衛隊が標的」とAP通信に語った。中部のカルバラやナジャフでは迫撃砲やロケット砲を使った戦闘があった模様だ。

 イラク軍は、米軍の攻撃ヘリコプター「アパッチ」などを撃墜し、米兵2人が死亡したと発表。米軍は否定している。

 30日付の米紙ワシントン・ポストによると、ブッシュ大統領は29日、キャンプデービッド山荘からチェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官とテレビ電話で会議を開き、バグダッド攻略に向けた作戦を進める方針を確認した。

 この1週間、悪天候や補給網を狙うイラク側のゲリラ戦術に手を焼く前線司令官から、首都攻略を急ぐより、補給線を立て直す期間が必要だとの不満が出ていた。

 この日のブッシュ氏の決定は、作戦休止は認めず、補給網整備や首都包囲と並行しながら、共和国防衛隊の戦力をそぐ空爆に力を入れ、首都攻略の機会をうかがう意向を示したとみられる。

 しかし、ロイター通信は30日、イラク中部の米軍部隊に2週間〜40日間の進撃中止命令が出され、一部が長期戦に備えて野営キャンプの設営を始めたことを伝えるなど、政権の方針と前線の対応がかみ合っていない実態を示した。 (03/30 22:43)
英首相の「イラクが英兵処刑」発言で波紋 遺族が抗議
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 「英兵2人がイラクに処刑された」とするブレア英首相の発言をめぐり、遺族が「事実と異なる」と反発するなど混乱が広がっている。戦況が膠着(こうちゃく)する中、イラク攻撃の正当化に腐心する首相のミス、といった見方も出ている。

 死亡した工兵らの遺族は先週、大衆紙の取材に怒りをぶつけた。「乗っていた車を待ち伏せされ即死した、と軍から説明された。首相はなぜ、うそをつくのか」

 首相の発言は先週、ブッシュ米大統領との首脳会談後に開いた記者会見で飛び出した。英兵を処刑したうえテレビに撮影させた、とイラク側を非難。「フセイン政権の残虐さを如実に物語る証拠」と訴えた。

 首相の報道官はその後、「遺体を調べたわけでないから、(処刑は)100%確実とは言えない」と後退。「状況が処刑を示唆している」と言い方を改めた。国防担当のイングラム閣外相も「遺族を傷つけたとしたら、申し訳ない」と謝罪した。

 首相発言の翌日、大衆紙はいっせいに、2兵士の悲劇を一面で報じ、イラクの非道ぶりをなじった。しかし、家族が異議を申し立ててから、「首相は真相を説明せよ」(デーリー・ミラー紙)など、逆にずさんな宣伝戦を追及している。 (03/30 20:00)
米軍ミサイル、サウジに着弾 サウジが正式抗議
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 サウジアラビアの国営通信は29日、米軍がイラクへ向けて発射したトマホーク・ミサイル4発が同国北西部に着弾したと報じた。地中海か紅海から発射されたとみられる。サウジ政府は米国に正式に抗議した。



米、イラクの自爆作戦に不気味さ 国防総省も「懸念」
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 イラク南部ナジャフで起きた米軍に対する自爆攻撃のニュースは、米テレビの29日夜の各報道番組がそろってトップで伝え、30日付新聞各紙も大きく報じた。以前から心配されていた「イスラム過激派の特徴」(AP通信)が明確な形で戦場に持ち込まれたことに、米国民は不気味さを感じているようだ。

 市民に偽装した兵士が自爆戦術を繰り出してくるという事態は、イラクの一般市民に対する安全確保という戦略目標を掲げる米軍にとって、頭痛の種になりそうだ。国防総省で29日、記者会見した統合参謀本部のマクリスタル作戦副部長は「我々の兵士を守るために、多大な配慮が必要になる」と認めた。

 陸軍退役大佐で軍事評論家のパトリック・ラング氏は米公共放送(PBS)のテレビに対し、こうした手口の作戦が「もっと早く起きてもおかしくなかった」と断った上で、「イラク人の民族主義感情を軽視した作戦計画の誤りはここにも反映している。今後さらに恐ろしい現象になる可能性がある」と警告した。

 ラング氏は「どんなに防御策を講じても、究極的には実際に戦場にいる米兵たちの問題。彼らは危険人物かもしれないと思う市民に対しては、極端な懐疑心を持つようになるだろう。市民を助けようという動機は弱まる」と予測する。



食糧届かず、前線にけだるい雰囲気 米海兵隊従軍ルポ
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 記者が同行する米軍第1海兵師団第1連隊でも、1日の携行食支給はもともと2食だったのが、28日から1食になり、29日は正午時点でまだ、ない。(クータルハイ<イラク南部>=野嶋剛)

 携行食のパックには、ステーキ、照り焼きチキンやクラッカー、菓子などが入っており、2食で大人1日分のカロリーに調整されている。1食では前線の兵士には全く足りない。

 制限が始まった28日から兵士らには、けだるい雰囲気が広がっている。部隊の前進も止まっているため、手持ちぶさたの兵士らが道ばたに横になる姿も目立ってきた。軍紀上、好ましくないとされる行動で、「戦争の序盤からこんな調子で大丈夫か」とこぼす兵士もいる。

 記者自身も1食では足りず、腹が鳴る。食べ残しておいた以前の携行食を時々かじる。補給担当のガニ軍曹は「今日中にも解決しなければいけない」と焦りの表情だ。

 一方、燃料も問題だ。記者の部隊では28日に予定していた軍用車への給油が、29日午前にずれこんだ。燃料の不足で、部隊の北上の速度が大きく遅れる可能性もある。



バグダッド進軍、数週間中断も=米軍関係者

 [イラク中部 30日 ロイター] イラク中部に展開中の米軍部隊関係者は、補給線の再編やイラク軍の根強い抵抗などにより、バグダッド進軍の中断は少なくとも数週間続くとの見通しを示した。
 兵士らによると、米軍部隊は、塹ごうを掘ったり、野営地周辺に地雷を設置するなどの作業を進めている。一方、バクダッド市内および周辺にあるイラク軍の目標に対する空爆や砲撃は継続されるという。
 今後は航空機による歩兵増員を行う一方、少なくとも2週間にわたって空爆の回数を増やす考えという。
 ロイター通信の別の記者によると、中断期間が35―40日に及ぶとの見通しもあるという。
 米国防総省は、進軍の中断について一切否定している。(ロイター)
<イラク戦争>北部イラク領から兵士後退 キルクーク防衛か

 イラク北部クルド人自治区とイラク領の前線の一つクシュタパにいたイラク軍兵士が28日夜、前線を放棄して数キロ南に後退した。イラク反体制組織「クルド民主党」のゲリラ兵幹部によるとイラク兵はこれまでの前線から約7キロ南のザブ川にかかる橋の後方まで後退、キルクークの北方約50キロの地点で新たに陣を構えた。(毎日新聞)
難民調査団がシリア着

 【ダマスカス29日共同】イラク戦争の難民の救援活動を調査するため、日本政府が救援医療チームの事前調査団として派遣した日本医大病院高度救命救急センターの小井土雄一医局長(45)ら5人が29日、シリアに到着した。
 在シリア日本大使館によると、一行は同日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などと今後の予定などを協議した。UNHCR関係者は「日本は協力を申し出た最初の国で、難民支援の大きな力となるだろう」と話している。
 シリアでは現在、イラク国境に近い地域で国際協力事業団(JICA)が医療支援などを行っているが、イラク難民はこれまでのところ、ほとんど発生していない。(共同通信)
自爆攻撃は軍将校が実行=イラク

 【カイロ29日時事】イラク国営テレビは29日、ナジャフ近郊での米軍への自爆攻撃を実行したのはイラク軍将校だとした上で、フセイン大統領が攻撃をたたえ、勲章を授与したと伝えた。
 同テレビは、将校の名前をアリ・ハマディ・アルナマニと伝えており、攻撃は米軍に「教訓」を与えるためだったとしている。同テレビは自爆を「犠牲と殉教の道への神聖なる幕開け」としており、同様の攻撃が今後も続く可能性を示唆した。 (時事通信)
イラク防空部隊司令官が更迭 大統領のいとこと英報道官

 【ロンドン29日共同】英国のブレア首相の報道官は29日、イラクのフセイン大統領のいとこで、防空部隊のムサヒム・サーブ・ティクリティ司令官が更迭されたことを明らかにした。
 報道官によると、英米軍機へのミサイル攻撃がうまくいかなかったことが更迭の理由とみられる。報道官は「イラクの地対空ミサイルは多くが目標に命中せず、爆発する前に落下している」と語った。
 26日と28日にバグダッドの市場にミサイルが直撃、多数の市民が死亡したことについては「イラクのミサイルと断言するわけではない」としながらも「そう説明することは可能だ」と述べた。(共同通信)
イラクの将軍を捕虜に 英軍、バスラ周辺で攻勢

 【ロンドン30日共同】カタール駐留のロックウッド英軍報道官は30日、イラク南部バスラの南方にあるアブカシブ村で同日未明、英海兵隊がイラクの民兵組織を襲撃し、イラク軍の将軍1人を含む将校5人を捕虜にし、共和国防衛隊の大佐1人を殺害したと英報道機関に明らかにした。
 襲撃で、戦車や装甲車も捕獲した。報道官は「将軍が指揮していた部隊などは不明だが、やがて有益な情報が得られると期待している」と述べた。現地の英BBC放送記者によると、イラク側の兵力は約500人。うち約30人が死亡、将兵約30人が捕虜になったという。
 バスラに近いルメイラ油田でも同日までに支配政党バース党幹部を捕虜にしたという。(共同通信)
米兵、ネットHPで「前線便り」

 【ワシントン=柴田岳】イラク戦争では、インターネット時代を反映し、若い「米兵」たちが自分のホームページ上で緊迫する前線の様子を連日報告し、注目を集めている。国防総省は兵士の一般的な電子メール使用は認めているが、「作戦行動を勘づかれないか」と懸念する声もある。

 「日曜日にクウェートに着き、飛行機から弾薬を降ろしていたら、スカッド・ミサイルの警報が鳴り、近くのバスに飛び乗った。クウェートに来て3回もスカッド警報を聞いた。作戦機密だから居場所や移動先は明かせない。敵も読んでるかもしれない」

 米陸軍予備兵のウィル(29)と名乗る人物は「兵士の物語」(http://rooba.net/will)という自分のホームページに27日付でこう書き込んだ。ウィルは自分を「コンピューター中毒」と称し、23日付で「これから民間機で北米大陸を離れる」と予告していた。

 昨年12月にペルシャ湾岸に派遣された米海軍予備兵で「スマッシュ大尉」と名乗る人物も「砂場からのライブ」(www.lt−smash.us)というホームページに日記を書いている。

 湾岸に異動して毎日14時間の勤務、クリスマス後は休暇もなかった。居場所は明かさないが、イラク周辺で後方支援任務にあたる小隊の隊長格らしい。「きょうも地元住民と会った。彼らは我々が思う以上にフセイン政権崩壊を期待している」という記述もある。

 25日付の日記では、3日前にヘリの衝突事故で死亡した知人の大尉に弔意を捧げ、これを見た大尉の叔母からの感謝の電子メールが28日付に掲載された。スマッシュ大尉に対する激励のメールも多数寄せられており、インターネット上で母国と戦場との新たなコミュニケーションが生まれているようにもみえる。

 ネット上の「兵士」の報告はほとんどが匿名だ。情報機関が世論操作を狙って作り話を流す可能性も否定できず、注意が必要だ。ただ、ロイター通信の取材に応じた「スマッシュ大尉」の父親は、「息子は1年近く前から家族との連絡方法としてホームページ日記を始めた。息子のページには毎日数千件のアクセスがある」と語ったという。

 兵士は個人のメールアカウントを持っている。米軍も情報伝達手段として電子メールを活用するからだ。作戦機密を漏らすメールは送信前に検閲していてもおかしくない。

 「兵士」による“前線便り”について、国防総省当局者は読売新聞の取材に対し、「兵士は部隊や個人を危険にさらすような情報の漏洩は禁じられている。一方で、言論の自由もある。これは『灰色領域』の行為かも……」と戸惑い気味だった。(読売新聞)