03/07/20 (日)
■今日の映像資料   Akemiのロンドン通信
ケリー博士の妻、ジャニス・ケリー(Janice Kelly)
英科学者の死、深刻な波紋 手首切って失血死
 英警察当局は、遺体で発見された英国防省顧問の科学者デービッド・ケリー博士(59)を検視した結果、左手首を切って失血死に至ったとの結果を19日、発表した。遺体近くに、ナイフ1本と鎮痛剤の箱が残されていた。英政府は近く、博士が死に至った経過について、司法調査を始め、数週間で結論を出す見込み。野党保守党のダンカンスミス首相は、「首相はアジア訪問を切り上げて帰国し、問題に対処すべきだ」と求めるなど、責任追及の姿勢を示した。この問題をめぐっては、フーン英国防相がBBC報道の取材源としてケリー博士を名指しするという異例の反撃に出たため、下院がケリー博士を召喚して厳しい質問を重ねた経緯がある。19日の英各紙は、「(英政府によるBBCへの)報復の犠牲者」(ガーディアン)、「(政府とBBCの)戦争の死者」(インディペンデント)など、政府とBBCの激しい対立の渦中にいた博士が極度のストレスを感じていたことを報じている。ケリー博士がイラクの国連査察でも実績のあった科学者だっただけに、死に追いやった政治責任を問う声が高まっている。

 ケリー博士の家族は妻のジャニスと長女Sian 32歳、それに双子の妹レイチェル(Rachel)とエレン(Ellen)30歳。隣人の主婦アン・ルイスはケリー博士を評して「家族思いの紳士で、決して自分の仕事のことは語らなかった」と云う。かつてはよく家族ぐるみで乗馬を共にして、地元周辺を走り回ったのだと懐かしがる。
 博士の捜索は軍関係者ら70人とスニファー犬、それにヘリコプターを動員する大掛かりなものだった。博士の遺体が発見されたのは18日の朝9時30分頃、警察発表では左手首を切って出血死した状態で見つかったという。遺書は遺体発見現場や自宅にもなかったらしい。覚悟の自殺ということか・・・それにしては遺書がないというのが気になる。死を決意した者はその決意に至る心情を書き綴るものだ。まして家族思いの博士なればこそ、遺書ぐらいは家族に残してしかるべきだと・・・急いで死ななければならぬ理由が他にあったのかどうか?やはり何処か不自然だ。

 かつてイギリスでは1986年から87年の1年間にかけて、SDI(戦略防衛構想)の関係者が立て続けに怪死する事件が勃発したことがあった。
1986年 8月 コンピューター技師ビアル・ダジバイ、橋から転落死
10月 コンピューター技師アシャド・シャリフ、首にロープを巻きつけ死亡
1987年 1月 オーディオ技術者アブダ・シンギダ、野外実験中に行方不明
2月 元国防省金属研究者が車の中で排気ガス中毒死
3月 データ処理技術者ディビッド・サンズ、車が壁に激突、炎上死亡
4月 国防省職員ロバート・グリーンホル、鉄橋から線路に落下、重症
 これら一連の怪死事件の犠牲者は1982年に国防省のコンピューター技師が死亡してから11人に達し、その全てが自殺と断定、処理されてきた。確率的にも自殺とは成り得ない奇妙な事件だった。共通点として、国防省など諜報と通信部門、それにインド人の多いことがあげられよう。それらがSDI関係者という一本の線で結びついていた。そこに浮かび上がってくるのは軍事機密と隠蔽工作という二つの言葉である。これにケリー博士の場合との類似性をみるのだ。酷似といっても言い過ぎではないと思う。博士はBBCに情報を流したが、かつてそのBBC総裁はステラ・アイザックという女性だった。彼女の旧姓はStella Charnaud、オスマン帝国のタバコ王と呼ばれたCharles Charnaud の令嬢である。彼女はインド提督にしてイギリス法務大臣アイザック Rufus Isaacs と結婚していた。その法務大臣アイザックの叔父Henry Isaacs はロンドン市長でもあった。そして法務大臣アイザックの妹Esther Isaacs はイギリス情報局のAlfred Sutro と結婚していた。彼はスペイン系ユダヤ人の名門「ストロ家」の直系でもあった。ここでSDI→国防省→情報通信→BBC→法務大臣→イギリス情報局という線が繋がる。この奇妙な符合はまだ続く。ギリス情報局Alfred Sutro の弟Henry Sutro がロンドン市長でもあった。前述の法務大臣アイザックの叔父もロンドン市長だったことを想起されたい。つまり、アイザック家とストロ家は同じ一族から二人のロンドン市長を出したことになる。また法務大臣アイザックの弟Godfrey Isaacs は通信軍需産業会社マルコーニ社の支配者だが、ここでは先のSDI怪死事件に絡んで4名の社員が死亡している。自殺とされたそれら死亡者にインド人が多いわけも、その兄ルーファス法務大臣がインド提督だったことで何か糸口が見出せるかも知れない。偶然にしてはあまりに符合し過ぎる。さらにアメリカ西部の大手銀行家リチャード・ストロ(Richard Sutro)の一族からはRothschild という名前が突如として出てくる。我らが大富豪ロスチャイルドのことと思われる。
 これにケリー博士との関連性がそっくり当て嵌まるわけではないが、その背景として考える時には何がしかの輪郭が浮かび上がってくるだろう。特にSDI関係者の連続怪死事件との背景としての酷似性は一つの方向を示唆してくれているようだ。
 
戸外の光が完全に遮断されたとき、そこで彼らの特殊言語が培われる。ある種の者たちにとって、密室ほど蠱惑的(こわくてき)な空間はない。人の死を、しかもおびただしい死を手中にしている幻想に浸ることができるからだ。しかし、カーテンが開かれるとき、隠微なその言語圏はたちまち闇とともに姿を消し、出席者らは1、2回わざとらしい咳ばらいをした後に、眩い陽光のもと、にわかに常人を仮装しはじめるのである。【辺見庸著「永遠の不服従のために」223頁】

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