今夜のTBS系列「世界遺産シリーズ」ではアフガニスタンはジャム村のミナレット(minaret)が紹介された。直径9メートル、高さ65メートルのこのミナレットは世界第二位の大きさなのだという。ミナレットは別名マナーラ(manara)とも云われ、アラビア語で光の意味がある。ヘラートにはシムール朝の9本のミナレットがあったが、ジャムのミナレットはそれより200年前のもので、ゴール朝のギャアースッディーン王が1294年に建てたものと云われている。興味深いのはその隣の小高い丘にはユダヤ人の砦があり、近隣のクシュカクの丘には彼らの集落の跡があることだ。それらの遺跡にはヘブライ語で書かれた文字も残されており、ミナレット外壁にはコーラン第19章のマリヤムが刻まれ、キリスト教でのマリアやイエスのことも書かれてあるといった多彩ぶりだ。異文化が見事に融合調和された当時の時代が偲ばれる。現代の排他的な宗教対立を考える時には、この当時は理想的な社会体系ではなかったかとも思えてくる。ミナレットの高台から定刻時にコーランを唱えるイスラム教徒の声が響き渡り、それを抵抗なくユダヤ人やキリスト教の信者たちが受け入れていた光景が浮かんでくるようだ。ハリー川とジャム川に挟まれるように建つこのミナレットは、現在その土台が浸蝕され少しずつ傾斜しているという。標高1900メートル、世帯数400の小さな村の山奥辺境に建つ巨大ミナレットは、平和と協調を象徴する塔として大切にしていきたいものだ。
 |
 |
クシュカクの丘、ユダヤ人の砦 |
チェステシァリフのゴール朝遺跡 |
|