午前中、納期完了、また次の仕事まで待たねばならなくなった。「商品がなかなか捌けない」と監督の表情も曇る。この不況はいつまで続くのか?まったく先が読めない。株価が久しぶりに一万円を突破したが、それは「みずほ」への公的資金導入に外資系投資家が一時的に反応したに過ぎない。ここでも末端で生活苦に喘ぐ国民の実態は無視されている。我々製造業に株価の上昇が恩恵をもたらすこともない。運転資金が銀行の貸し渋りにあっている今、この先どうすればいいのか・・・監督が去った工場で呆然自失している自分がいる。
倒産する会社も珍しくないほど不況が馴染んできている。裏のパチンコ屋も内部から取り壊され、外壁に空けられた大きな穴から瓦礫が覗く。ライオンが獲物の腹部を食い破り、首を突っ込んで内臓から食べる様子に似ている。バリバリという取り壊す際のもの凄い音が絶えず響く。まるで自分が瓦解していく音のようで耳を塞ぎたくなった。
「思いもよらないこと」 長崎幼児殺害で遠山文科相
長崎市の幼稚園児殺害事件について、遠山文部科学相は9日昼、国会内で報道陣に対し、「中学生ですか……思いもよらないこと。あのように残酷な事件を中学生が起こしたのだとすれば大変な衝撃だ」と話した。そのうえで「原因をしっかり究明して、このようなことが再び起きないように、なんとか止めていかなければならない」と述べた。
権力者の認識程度はいつもこんなものだ。おぞましい特異な事件として葬りながら、事件解決に監視カメラが果たした役割と有効性を打ち出しては、さらに国民の監視体制を強固にしていく。荒涼として乾き切った心の風景を映し出すカメラは何処にもない。フツーの人間に内在する原罪は表層的な偽善に覆われているだけで、いつ爆発してもおかしくはない臨界に達している。素直な良い子の無理が悲鳴を上げはじめているだと・・・こうした事件は「再びおきないよう」文科相の意に反して、頻発していくことだろう。事件の残酷さ以上に、残酷で無惨な心象風景にあって。
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