03/06/25 (水)
 昨夜は例の食堂のおやっさんと話をしていた。半信半疑だったものが、体験に基いた具体的な話に展開するに連れ、やはり興奮する。ウラ社会の黒幕だった人物が、その巨大利権の蠢く様子を淡々と語る。「今のアンタみたいに酒を飲んでちゃ、それだけで命取りになる世界だ」というおやっさん当人が洋酒をがぶ飲みするのには笑えた。「こんなことは警察にも云ってない」と笑うが、云えないのが当たり前だ。ここで具体的な話を書けないのが残念だが、私自身もう忘れようと思う。知らないでいい世界でもある。新聞ネタとしては一級品だが、新聞社がリークしてもおそらくそれが発表されることはないだろう。いいかげん切り上げて帰ろうとする私を、おやっさんが引きとめる。そのまま留まれば夜明けまで話をするつもりらしい。私も聞きたいのは山々だが、好奇心だけでは緊張感に付いていけない。大物を紹介すると云うに及んで、まっぴらごめんと帰ってきたが・・・一度はテープ持参で記録しようとも思ったが、いかに貧乏とはいえ、私は普通の生活のほうが良い。支配するよりされる側、騙すより騙されるほうがマシだと小市民の自分に感謝する。ちまちまと生活しながら、足るを知る堅実な人生を歩んでいきたい。しかしながら、底冷えするようなこの不景気は何だろう。足るを知る以前の深刻な問題が横たわっているような気がしてならない。昨日、私が尊敬する同業社長がこれまで一度も口にしなかった言葉を吐いて驚く。自殺を仄めかしたのだ。廃業できる経営者は幸運だ、頑張ればそうするほど累積赤字は増えていく。死んだ人が羨ましいほど今は生き地獄だ、と声を震わせる・・・私は返す言葉を失った。私は彼の責任感ある人柄をひそかに尊敬してきた。そんな彼を死なせてなるものか。しかし・・・口を覆って嗚咽する深夜、この慟哭を受け止めるべき指導者は、神は、何処にも見当たらない。
 
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