---03/05/19 (月) ---
【インドネシア】アチェ統合作戦、きょうにも発表
 政府はきょう19日にも、治安悪化の続くナングル・アチェ・ダルサラーム州での統合作戦実施を正式に決める見込みだ。政府は当初15日に同作戦の実施を決める予定だったが、日本などの要請を受け急きょ東京で独立派組織「アチェ自由運動」(GAM)と和平維持に向けた最後の協議を開催。しかし最終日の18日までに両者の対立は変わらず、昨年12月に結んだ和平合意が事実上崩壊することが確実となった。政府は先週、和平維持をめぐるGAMとの対話期限が12日で切れたのを受け、15日にも統合作戦と軍事非常事態宣言に関する大統領令を発布する予定としていたが、昨年東京で開かれたアチェ和平復興準備会合を主催した日本と米国、欧州連合(EU)、世界銀行の代表者が14日夜になって東京での協議開催を要請。政府とGAMはこれを受諾し、17、18日の両日、東京で最後の協議に臨んだ。
 協議は非公開で行われたが、関係者によるとインドネシア側は和平継続の条件として独立意志の破棄、特別自治法への同意、武器提出の順守の3点を要請。しかしGAMは全条件で受け入れを拒否した上、国家警察が16日にバンダアチェで交渉に出発しようとしたGAM幹部5人を逮捕(その後釈放)したことに抗議するなど反発を強め、18日深夜まで続いた協議は結局物別れに終わった。政府は統合作戦をめぐり、15日に国会関係者の承認を取り付けているほか、17日の緊急閣議で遅くとも19日までに大統領令を出す方針を確定。ハムザ副大統領も18日、「GAMが3つの条件を受け入れない限り、軍事作戦しかない」と明言しており、きょうの大統領令発令は確実な情勢となっている。統合作戦は人道、法の確立、行政機能回復、治安回復の4つの作戦を並行して実施するもので、実質上の軍事作戦となる治安回復作戦では国軍がGAM壊滅を目指して武力を行使。政府関係者によると、同作戦ではGAMを一般市民から隔離した上で特定地域に追い込み、集中攻撃を行うという。GAMの勢力は現時点で約5,000人。一方、国軍はすでに3万人以上の兵士をアチェ入りさせ、準備を完了している。政府はまた統合作戦と同時に軍事非常事態宣言も発令する方針。同宣言が発令された場合、国軍は行政の統率権を持ち、通信・出版・表現・経済活動の制限や公共施設の閉鎖、逮捕・拘束などを行うことが認められる。
■住民ら10万人避難へ
 ナングル・アチェ・ダルサラーム州のアブドゥラ・プテ知事は18日、統合作戦が開始された場合、州内の住民400万人のうち約10万人が州内各地に避難する見込みだと明らかにした。地元紙コンパス(ウェブサイト版)が伝えた。避難が予想される場所は85カ所で、1カ所ごとに約1,000人ずつが避難する見込み。政府は今後各地の避難場所で避難所施設や学校などの建設、必需品・医療サービスなどの支援を行う方針で、すでにコメ151トンのほか即席めん12万食、タオル12万枚、洗面道具350セットなどを用意した。また各地の病院や保健所に医療従事者2,780人を配置し、重傷患者の治療体制も確保。各地の病院で手に負えない患者はバンダアチェの病院に搬送し、なおも治療困難な場合は北スマトラ州メダンの病院に移送する。アチェ各地では依然として国軍・警察とGAMの武力衝突が頻発しており、18日にはビルン県チョットウノ村でパトロール中の警官隊とGAMのゲリラ部隊30人が3時間にわたって銃撃戦を展開、警官1人が頭を撃たれ重傷を負った。このほかGAM側の発表によると、北アチェ県でも同日、警察機動隊とGAMの衝突によりGAM兵士1人と住民1人が銃撃され死亡している。
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