伝票を整理していたら材料の値段が仕入れ日によって違っていることに気付く。株じゃあるまいし、そう値段が上下するはずはない。材料屋の思惑もあるだろうが、納得いかない点は追求すべきだ。というわけで早速電話した。そしたら書き間違いとかのミスを認めたので、安い値段の方に統一してもらった。傍で聞いていた妹が私をして「強引ねえ」と云う。強引もへったくれもあるものか、相手がミスを認めたのだから、こちらとしては当然の要求だ。妹は「何か仕返しされそうで、恐い」と云う。おかしなことを云うものだ。かつての私なら感情的になってまくし立てるところだ。このまま知らん振りして相手の云うがまま払えば、どうしても心にわだかまりが篭る。そのことの方が精神的にも悪い。ハッキリさせて、スッキリすればいいではないか。誰でも儲けたい気持ちはあるだろう。それが商売根性というものかも知れない。しかし、成長期ならいざ知らず、この不況下にあっては皆が生活に苦しんでいる。少しでも利益を上げようとするあまりの下手な小細工も理解できないわけではない。だが、それを容認してしまえば、些細な利益のことで疑心暗鬼がつのるばかりだ。どんなに苦しくとも、人間同士の信頼感だけは繋いでいたい。そのためには誠意ある商売ないし仕事をするしかない。逆恨みされて何らかの圧力を受けようとも、私に悔いはない。失うものはもう何もない。
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