---03/04/03 (木) ---
 先陣の第3歩兵師団がバクダッドまで30キロに迫っているらしい。1日には後続の第4歩兵師団の第一陣約5000人がクウェート入りしたという。3万人の後続部隊が結集するまで動かず、バクダッドへの総進撃は2〜3週間後になると云われている。それまで先陣の第3歩兵師団がイラク共和国防衛隊と主要道路奪回に攻防戦を繰り広げるわけだ。こうした一連の作戦から考えると、第3歩兵師団の快進撃はどうも腑に落ちない。早すぎるのである。これでは補給ルートの確保どころか、イラク軍のゲリラ戦による側面攻撃で補給ルートはズタズタにされる懸念が出てくる。米軍は「共敵は分散に如かず、敵の陽なるは敵の陰なるに如かず」といった秘本兵法三十六計、第一部「勝戦の計」第二計「囲魏救趙」の術中に自ら嵌るようなかたちになっている。「分散させて撃て」である。つまり第3歩兵師団は自らを「分散しておいて撃たれる」態勢にしてしまっているのだ。これをイラクは見逃すはずはない。彼らはここぞとばかり徹底したゲリラ戦で補給ルートを断つだろう。ペンタゴンはすでにこれらのミスを承知のうえだとすれば、これは計算づくの戦略とも受け取れる。彼らお得意の「わざと撃たせて総攻撃の口実をつくる」手口だ。解釈すれば第十一計「李代桃僵」、「勢い必ず損あり、陰を損いてもって陽を益す」すなわち「皮を斬らせて肉を切る」だ。すでに第3歩兵師団の前線からは命令系統の不備に兵士の不満が出てきている。右往左往の中、バクダッドに向けて前進するしかない、といった混迷ぶりだ。前進すればバクダッドでの市街戦という泥沼が待ち、留まればイラク軍の狙撃に脅かされる。前線兵士の焦りは命の危険となり、自分たちが単なる戦争の捨て駒だったことを思い知ることになる。本当のイラク決戦は、第3歩兵師団の累々たる屍を、第4歩兵師団3万の軍靴が乗り越えてのバクダッド総攻撃で始まるだろう。そしてその火種はクルド自治区に向かい、キルクーク油田地帯に移る。ここではトルコがどう出るか?が最大の関心事になるはずだ。トルコが国境を越えて南進すれば戦争はさらに拡大してしまう。今のところ、私の頭で想定できることはそんなところだ。杞憂であってほしいが、現にイラク戦争は起こってしまった。いつの時代にあっても戦争が教訓とならない人類の原罪を考えざるを得ない。

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