---03/03/31 (月) ---
 昨夜のNHK総合テレビでは、ロサンゼルス近郊の通称「要塞の町」といわれる「コト・デ・カザ」が紹介されていた。全米に2万ヶ所あるといわれる厳重に管理警備されたこれらの街には、苛酷なアメリカ経済競争に勝ち抜いた者たちが購入した家があり、勝ち組のステータスシンボルともなっている。その要塞内に小学校建設の計画が浮上した際には住民の大反対にあう。小学校が建設されれば教員など、外来者が増える。これでは要塞の町が普通の町と同じになり、自宅の不動産価値が減る。苦労して勝ち取った資産価値を失ってたまるか、というわけだ。かくしてどこまでもエゴが付いて回る、要塞の町の住民に反吐が出る思いで番組を観ていた。全米で15%にも満たないといわれる一握りの勝ち組と、大多数の生活困窮者を抱えるアメリカの光と影のコントラストは強くなるばかりだ。世界金融システムそれ自体が投機的構造となってしまった現在、それら一握りの成功者にしてから資産を一夜に失いかねない危うさがある。事実、そうして要塞の町から引越す場面もあり「少ししか住めなかった」と、一瞬の夢を後に要塞町コト・デ・カザを去る者が続出している。そこに新たな勝ち組の家族が念願の家を手に入れたと希望に燃えて入居して来る。人生の悲喜劇が凝縮されたような要塞の町に、終始一貫して他人を顧みないエゴの執着を感じていた。ここは日本の近未来を暗示させるものがある。
 さっき納期で製品を引き取りと支払いに訪れた監督とも話していたが、今度のイラク戦争を対岸の火事のように考える人が殆どだと・・・対岸の火事であるはずの戦争という火の粉が、グローバル化の波によって一瞬にして日本に降りかかることだってある。それが現にガソリン代の僅かな値上がりとなって現れているにもかかわらず、みんな戦争どころではない自己保身に固まっていると、監督はため息をついている。インターネットをやり始めたばかりの監督のこと、最近、私の影響を受けてか国際情勢を語ることが多くなった。フセイン大統領と二人の息子ウダイとクサイらはピンポイント爆撃ですでに死んだのではないか?かく云う監督に「その可能性は大いにありますね。影武者の17人はいるというフセインのこと、本人が死んでもイラク軍部首脳はフセイン大統領の替え玉を見せておいて、そのまま作戦は継続させているかも知れない」と私、死せる孔明、生ける仲達を走らす、である。

しばい【司馬懿】中国、三国時代魏の政治家、武将。死後西晋の高祖宣帝と称された。字は仲達。魏の曹操・文帝(曹丕)・明帝・斉王芳の四代に仕えた。蜀漢の名将諸葛孔明と五丈原で対戦。(一七九〜二五一)

 正午現在、四月は仕事が少なくなるとの監督の言葉が呪文のように頭の中を駆け巡っている。それでも頭を抱えてばかりはいられない。これまで何とかやってきた、これからも何とかするしかない。何とかなるだろう楽観を保持しながら、それでも絶望的な現実にどう対処すべきか? やはり頭を抱えてしまうのである。しかも、私の背後では絶望的な会計報告を矢のように撃ち込む妹の声がしている。空は快晴、暖かな春の陽射しに、日本列島南端から桜が咲き始めたというニュースが伝えられている。イラクの空も晴れているのだろうか?
 
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