昨夜、久しぶりに訪ねた店の灯りが、軒並み消えていた。みんな店じまいしていた。ゴーストタウン・・・行き交う人もまばらに、思い出だけが私の脳裏を通り過ぎてゆく。何億という弟の借金を返したのだと、過去を語っては私の苦境の甘さを思い知らされた夜のこと・・・そんなマスターも今はいない。もうドラマは何処にも無くなった。
今日は何もしたくない、何もせずボンヤリとして、冷たい雨をただ眺めていた。夕暮れの雨の中、回覧版を渡しに行く・・・冷たい雨が心に染みる。更地だけの風景に人の気配はない。たまに行き交う人の顔も無表情だ。私を見かけた知人の言葉、いつも怒っているような顔をしている、のだと・・・無表情よりマシというものだろう。微笑んで挨拶するほどの心の余裕はない。寒いんだよ、何もかも・・・自分に嘘の付けない不器用な男がひとり、ひたすら漂っているだけなのさ。
会社休業の手続きに絡んで、今日、裁判所から商法違反事件、過料決定8万円なりの書類が届いた。異議申し立て期間一週間、土曜と日曜挟んで正味6日間しかない・・・これは計画的だね。原因としては手続きをした建設綜合社のミスが考えられる。ちょうど会社の取締役だった母が死んだ時期だ。このとき変更手続きを忘れたとの報を受けていたからだ。慌てて書類を作成したみたいだったが・・・いずれにせよ異議申し立ての裁判でも敗訴する確率の方が大きい。実に馬鹿げている。些細なミスも見逃さず、搾り取れるだけ搾り取る腹だ。こんな零細企業イジメテ、何が面白いのか?面白いんだろうなぁ・・・イジメの醍醐味を知ったらやめられないだろうなぁって・・・その心理のほどを推測している。まだ雨が・・・冷たい雨が降っている。猫たちが無邪気に駆けずり回っている。猫になりたい。
ストーブの前で猫たちが丸くなっている。そこへグレーが申しわけなさそうに寄ってくる。それを拒む先住猫族たちの唸り声・・・ちょっと入れてあげておくれよ。外は冷たい雨なんだ。
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