Akemiのロンドン便り
2003/02/18-13:13着
反戦デモの日、私はバイトしてました
 ロンドンではヒースロー空港に戦車が配備されたのが大きく報道されたり、ガトウィク空港では手流弾を持ち込んだ男が逮捕されたり、と、警戒体制厳重な今日この頃のようですが、実はもうヒースローに戦車はいません。(すくなくとも15日にはいませんでした) 私の身辺では何日か前、夕方のラッシュ時に、キングスクロス駅に不振な車が放置されているということで、近隣地区一帯が通行止めになり、ラッシュアワーの交通は一時マヒ状態となり、駅から2分のわが家の前には警察のテープが張られて家に入れませんでした。でも、結局爆弾も何もなかった。(不審物さわぎで家から避難させられた経験はIRAテロの時代から3度目です)センセーショナルな報道には気を付けないといけません。

 でも、15日の反戦デモは100万人の戦争反対という思いで心をひとつにしたという意味で本物だったと思います。前回のデモの時は私は中心地のピカデリーに居合わせたので、いったいどこからこんなに人が集まったのかと思いましたが、今回は北の行進スタート地点のひとつに居合わせたのでわかりました。 イギリス各地からバスを連ねて有志たちが集まっていたのでした。リーズ、ノッティンガムなど地方の労組、ムスリム系をはじめとするいろいろな青年団、大学のサークルなどなど、イギリスに住んでいるありとあらゆる人種の人々が参加していました。(なぜか中国系や日本人はとても少なかったですが、、)バスはざっと見たところでも100台はあったと思います。参加者の年齢層もさまざまで、若者もいれば、親子づれもいる。なかでも印象的だったのは、手作りのプラカードや横断幕を手に行進する初老のカップルが多かったことでした。
 
 それぞれの思想に差異はあるかもしれない、けれども、「反戦」ということにおいてひとつになった心のパワーには圧倒されました。集まってきた人たちを見て、普段クールな私も自然に涙があふれてきました。この感覚は前にも一度味わったことがあります。ダイアナ妃の亡くなったあとの数ヵ月間です。大波のような弔問ラッシュのあとも、しばらくの間、道をあるいても地下鉄にのっても、花束をかかえた人が必ずひとりはいて、純粋にひとりの女性の死を悼む気持ちが町中にあふれ、空気さえも暗く重たくなっていました。これは単なる集団ヒステリーではないということは今回のデモも、ダイアナ妃のときも、現場に居合わせた私は断言できます。
 今回の反戦デモでは人種も文化も違う大勢の人が集まって喧嘩などが大事故が起こらなかったのも、市民の勝利ではないかと思います。 イギリスという国の人びとのすばらしさを感じました。プラカードを眺めていて傑作だと思ったのは、大きなハートマークのなかに、見つめあうブッシュとブレアの顔写真があって、「MAKE LOVE, NOT WAR!」というもの。ちょっとブラックなユーモアですが心の余裕というか、大人のユーモアを感じます。これと同じパターンで、ブレアの頭のうえにティーカップがのっていて、スローガンは「MAKE TEA, NOT WAR!」という健全なのもあったようです。

 今回も仕事中だったとはいえオブザーバーにとどまってしまった私をふくめて日本人は心の表現が苦手かもしれませんね。けれども、そんなときはただ強く念じるだけでも思いは届くかしら、、せめてイギリスにいる間にユーモアのセンスを身につけたいなあ、、

 夕方、ハイドパークの大集合を終えて地方に帰る人たちのバスの波と遭遇しました。彼等は決してロンドンに遊びに来たわけじゃない。デモに参加するためだけに一日をさいてやってきたのだということがわかりました。 私が生活費をかせぐためにあちこち奔走しているあいだ彼等は寒空の下、反戦を叫んでいた、、