正月明け二夜に渡ってジャンヌ・ダルク(Jeanne
d’Arc 1412-1431)の海外ドラマが放映されたが、歴史を学ぶ上にも参考になった。彼女は1429年、王位継承を奪われていたシャルル7世(Charles
Z 1403-1461 在位1422-1461)をイギリス軍からオルレアン(フランス中部ロアレ県の県都)と共に解放した。1430年コンビエーニュ救出の際にイギリス軍に捕らえられ、翌1431年ルーアン(フランス北部セーヌ・マリティム県の県都)の宗教裁判で異端者として火あぶりの刑に処せられた。集団ヒステリーの典型ともいわれる魔女裁判は、13世紀後半に本格化しジャンヌ・ダルクも魔女として火刑に処せられたが、489年後の1920年には教皇庁により聖女として定められている。以下、ドラマで再現されたルーアンでの宗教裁判の問答を要約抜粋する。
司教「これらルーアンの有識者の中から助言者を一名選ぶことを許そう」
ジャンヌ「小羊に、狼の群れに助けを求めよと仰るのですか?」
司教「ここは厳粛なる裁きの場であることを忘れぬよう。助言者は必要ないと、そう解釈して良いのかな?」
ジャンヌ「それでけっこうです」
司教「では被告は跪き、全ての質問に対して真実のみを答えると誓いたまえ」
ジャンヌ「いいえ、それは何を問われるかによります。決して明かせぬ事柄もある」
司教「真実のみを答えると誓うのだ」
ジャンヌ「何にでも正直に答えます、司教様。国王に示した神の印以外なら」
司教「おまえは異端者として火あぶりになるか、改悛して一生牢ですごすかの道しか残されてはいないのだ」
ジャンヌ「違います」
司教「どう違うのだ?ジャンヌ。ここから救出されるとでも神が云ったのか?」
ジャンヌ「大きな危険が司教様を待ち受けています。声がそう告げました」
司教「大きな危険とは何のことだ?」
ジャンヌ「私を裁けば肉体も魂も苦しむ」
司教「拷問とその執行官を前に全てを明らかにせよ。あくまでも拒否するなら無理にでも云わせることになるぞ」
ジャンヌ「痛みから何か口走ったとしても、あとで全てを否定します。なぜ神と言葉を交わすことが罪なのですか?なぜです?」
司教「地上における神の代理人である教会に服従すること、汝はそれを永遠に拒否するのだな?」
ジャンヌ「たとえ杭が打ち立てられ、火が付けられようとしても、神を信じつづけます」
司教「ジャンヌ、すでに杭は立っている。脅しではないのだぞ」
こうして宗教裁判はクライマックスを迎え「地上における神の代理人であるところの教会」によって、彼女は裁かれていく。司教が何をもって教会を神の代理人だと決め付けられるのか?という疑問と同時に、ジャンヌ本人にしか聞こえない神の声を「妄想異端の魔女」として裁くことで、教会の威信を保とうとする司教の立場をも考えさせられる。火あぶりの刑を宣告されながら、この悲劇もまた神の計画なのだとするジャンヌにあって、地上における人類による人類自身の裁きとは何なのだろう?ここでは権力の魔性が教会の権威として働いているように思えてならない。
【視聴予定】
選別対象局→NHK総合 NHK教育 テレビ朝日 日本テレビ TBSテレビ フジテレビ
■17:30-18:24 TBSテレビ報道特集 イラク査察の実態を初公開・戦争は不可避?
■23:00-25:15 フジテレビEZ!TV 対北朝鮮イラク緊迫…2003世界のシナリオ▽年越しはテント…40万人初詣でにかける露天商たち
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