人質解放、容疑者を逮捕 京都中央信金立てこもり
京都市下京区の京都中央信用金庫本店で26日午前、拳銃のようなものを持って立てこもった元不動産販売会社社長、徳田衛一容疑者(60)が27日午前2時41分、京都府警の捜査員の説得に応じて6階応接会議室から出て投降、府警に人質強要処罰法違反などの疑いで逮捕された。人質となっていた男性職員2人は約17時間ぶりに無事解放された。府警は融資の返済をめぐるトラブルが動機とみて調べている。
最後まで人質になっていたのは、債権管理部の住岡伸樹部長(54)と、谷川宗嗣・債権管理課長(58)。
調べによると、徳田容疑者は26日午前、信金6階応接会議室で住岡部長、谷川課長ら職員3人と約9億円の債務の返済について話し合っているとき、銃のようなものを取り出し、お茶をもってきた女性職員(23)をふくむ4人を人質に、会議室に立てこもった疑い。
府警や信金側の説明によると、同容疑者は午前9時50分ごろ、「融資の相談がある」と1階で受け付けを済ませ、中に入った。会議室に立てこもる直前にいったん廊下に出て、右手に銃のようなものをかざしながら、「警察を呼べ」「爆弾をドアに張り付けた。逃げたら爆発するぞ」などと叫んだという。
捜査員がドア越しに説得を続け、午後4時40分ごろ、女性職員を解放したが、その後も立てこもりを続け、「理事長に会わせろ」などと要求した。午後10時32分には、人質になっていた債権管理部の岩谷登次長(52)も解放した。
徳田容疑者は犯行前日の25日午後4時ごろに、同信金に「あす(26日)の午前10時にそちらに向かう」との電話をかけていた。
徳田容疑者は、元部下が勤める会社の事務所にも、犯行を予告するビデオテープと手紙を置いていた。26日朝、元部下の女性が発見。女性らはニュースで事件を知った後、徳田容疑者の知り合いのいたフジテレビ系列の関西テレビ放送(本社・大阪市)にビデオを貸した。
元部下の女性3人は26日夜、京都市内のホテルで記者会見し「事件は、徳田容疑者に会社の再建資金の融資を約束した京都中央信金が、約束を守らなかったことが原因」などと話した。同容疑者が社長をしていた不動産販売会社は京都市下京区にあったが、91年に事実上倒産、今月初めに解散している。
これまでの調べによると、徳田容疑者は以前、「特許申請している介護用ユニットバスを担保に、他行が1億円を融資してくれる話がある。これを払うので、残り8億円を棒引きにして欲しい」と要求。信金側は、特許について調査したところ、別人のものだったので断ったという。
民間の信用調査会社などによると、徳田容疑者の不動産販売会社があった土地・建物は、税務署などの差し押さえを受けた。99年に競売で京都中央信用金庫の子会社にあたる中信総合管理に落札された。