仕事だけではなく、業者間の連絡も途絶えた。みんなが心を閉ざし始めている。不景気は外からだけではなく、人々の心の内にあって自ら崩壊していくようでもある。元気?という私の決まり文句に「まあね」、仕事のほうはうまくいってる?に「なんとか」「そこそこ」・・・諦めきった、元気のない声しか返って来なくなった。冗談も云えなくなっている。政府の不況対策にも関心を示すことなく、心が冷え込んで来ているようだ。仕事の話をしようにも、その仕事すらない現状・・・つまり話にならない。市内にあった5軒の材料屋のうち3軒が倒産した。ある老舗の店では支店長自ら得意先回りを始めた。ところが今まで現場回りをしていなかったので、自分が売り込む商品が殆ど分からない。付き添う営業マンの説明を受けての得意先回りに四苦八苦している。遠からずこの支店長はリストラされることだろう。最近姿が見えなくなったので、もしや?と思っている。その店にインターネットの導入を勧めていたが、何故か笑って取り合わない。種類が多いだけに時々間違って別の商品を配達することがある。商品番号の確認ミスもインターネットでなら防げるはずなのだ。馴染みの監督はやっとインターネットのプロバイダに加入することになった。さっそく仕事の手順をインターネット経由で報告することを提案したが、釣りが趣味なので仕事には使わないと云う。唖然とした。インターネットそのものを趣味としか考えていないのだ。何処でどんな魚が釣れるか?情報を交換しあうことが仕事に優先するらしい。某大手の監督にしてパソコンはやはり釣りの趣味にしか使わず、仕事のデータをCD-ROM化して送ったが・・・無駄になったようだ。私のパソコンにしてさえその導入にあたっては会社の経費としては認められず、全ては自腹を切って捻出した。周辺機器を購入する際にも妹には趣味として扱われ、生活費を切り詰めて買っている。これだけパソコンが普及しながら、会社において活用認知されないというのは奇妙なことである。硬直化した経済に風穴を開けるためにも、ここは思い切った流動システムを導入すべく、融資の獲得条件として提示することを考えている。それが駄目になったとしても、こちらとしては何も失うものはない。当たって砕けてやるしかあるまい。
行き場ないと…男女と犬、団地自室で死亡
22日午後1時5分ごろ、名古屋市瑞穂区の公団団地の無職女性(34)宅で、この女性と、同居する無職の男性(45)が死亡しているのを、部屋明け渡しの執行に来た名古屋地裁執行官らが発見、瑞穂署に届けた。
女性は、家賃滞納を理由に部屋の明け渡しを求める公団から裁判を起こされ、「今は働くところがありません。食べていくのがやっとです。団地を出たら行くところもありません」と窮状を訴える手紙を裁判所に提出。弁護士を頼まないまま、9月に名古屋地裁から明け渡し命令を受けた。2人とも遺体の腐乱が進んでおり、同署は、自殺と病死の両面で調べている。女性宅は電気、ガスも止められていた。調べでは、男性は四畳半の部屋で、布団から上半身を出しあおむけの状態で死亡、女性は男性の足元でうつぶせになって死亡していた。目立った外傷もなく、玄関に鍵が掛かっていた。女性のそばでは、飼っていた犬も死んでいた。瑞穂署や都市基盤整備公団中部支社によると、女性は7年前に同団地に入居。女性は3月から月約5万8千円の家賃を滞納し、公団が部屋の明け渡しを求め7月に提訴した。裁判記録によると、女性の手紙には「働くところが見つかり次第、少しずつでも家賃をお払いしたいと思っています」ともつづられていた。執行官は10月25日に部屋を訪問。留守のため置き手紙をすると、女性から連絡があり、今月8日に再訪する約束をしたが、当日は応答がなかった。22日、業者を呼んで鍵を開け遺体を発見した。
他人事ではありませんな・・・彼らと同じ状況下に追い込まれている人々はたくさんいるはず・・・私を含めて。結局のところ、ここまで追い込んだのは経済苦など外的要因のみならず、彼ら自身の絶望感であり、結果的に自分で自分を追い込んでしまったということにもなる。まさに「心こそ心惑わす心なれ、心に心、心ゆるすな」である。彼らが裁判所に窮状を訴える時点で、弁護士に仲介を頼んでいたらこのような悲惨な結果にはならなかったと思われる。生活保護法の無差別平等の原理を規定した第二条、及び、国民の最低生活保障と自立助長に対する国家責任を規定する第一条においても、彼らの生存権は守られるべきだった。しかし、それ以前に彼らはその生存権さえ放棄するような絶望感に陥り、ために死を選んだようにも思えるのだ。資本主義国家ニッポンにあっては人間をも値踏みせずにはおかない拝金主義、貧乏を恥じる世相、そうした諸々の要因が彼らに精神的圧迫感を与えていったのではなかろうか。貧乏に居直りを決め込む私のような類いは、そういうことでは多分に恥知らずなのだろう。その恥知らずの私にして、今の世の中は生き難く、かつ疲れを感じている。勝ち組み、負け組みといった貧富の差をことさら強調し「弱者は淘汰されるのみ」と平然と言い放つ者が増えているようだ。そんな中にあって、今回の事件はそれら冷徹な世相への抵抗とも思えてくる。
【視聴予定】
■22:00-22:30 TBSテレビ ブロードキャスター
この不況に何で…OL驚きのゴージャス生活
■22:30-23:00 NHK教育 美と出会う「90歳・自然に挑み続けて」
佐藤忠良
■23:00-23:30 NHK教育 ビジネス塾
■24:55-26:55 NHK教育 ビジネス塾 会社債務で破産ほか
|