バリ島で爆弾テロ、187人死亡 日本人も7人重軽傷
 インドネシアの観光地バリ島で12日午後11時15分(日本時間13日午前0時15分)ごろ、相次いで爆発があり、現地警察当局によるとオーストラリア人ら多数の外国人を含む187人が死亡、300人以上が負傷した。日本外務省によると負傷者には日本人7人が含まれ、うち2人が重傷。インドネシア国家警察は連続爆弾テロとみて捜査を始めた。
 世界最大のイスラム教徒人口を抱える同国では、昨年の米軍によるアフガニスタン空爆以来、反欧米感情が高まっており、外国人を標的にしたテロとの見方も出ている。
 国家警察によると、最も大きい爆発は同島南部クタ地区の繁華街にあるディスコ「サリ・クラブ」近くで起きた。外国人客で満員だったディスコは大破して炎上、隣の建物に延焼した。 現地の警察当局によると、死者187人の7割以上が外国人で、その大半がオーストラリアの観光客やラグビー選手。英国、スイスなど欧州の観光客もいた。日本人負傷者は全員女性で、神奈川県の斎藤綾乃さん(30)と妹のカホ・ブラウンさん(28)が背中や足にやけどを負って入院したが、意識はあるという。 この爆発と前後して、同島の別の地区にある米名誉領事館の近くの広場と、スペイン名誉領事施設の付近でそれぞれ爆発。12日夕にはスラウェシ島マナドのフィリピン領事館付近でも爆発が起きたが、いずれも死傷者はなかった。  国家警察のバクティアル長官は13日、「爆発の規模からテロリストの犯行だ」と述べた。爆弾はディスコ前に止めた車に仕掛けられていたという。
 インドネシアでは米国のイラク攻撃計画への反発が強まっており、9月23日には首都ジャカルタの米大使館員宿舎近くで自動車内の手投げ弾が爆発する事件が起きた。フィリピンやシンガポール、マレーシアなど東南アジアではイスラム過激派の活動が活発化。テロ組織アルカイダと密接な結びつきがある過激派が米国人を襲う可能性も指摘されていた。
 オーストラリアのダウナー外相は13日、「アルカイダと関連がある組織による犯行の可能性が高い」と地元テレビに発言。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は同日、米政府高官の話として、米国を標的にしたテロとみて米連邦捜査局(FBI)のチームが現場に向かったと報じた。
 「サリ・クラブ」は、リゾートビーチとして日本人観光客にも人気が高いクタ地区の目抜き通り「レギアン通り」にある外国人専用のディスコで、連日未明までにぎわっていた。
 目撃者によると、ディスコ正面の路上には直径4〜5メートルの穴があき、周囲には犠牲者の遺体が飛び散っていた。最初に近くの別のディスコで小さな爆発があり、客が屋外に飛び出した時に大爆発があったとの目撃情報もある。通りに立ち並ぶレストランやホテルの窓は激しい爆風で広範囲にわたって割れ、南国風に草木を使って建てられたディスコは数時間にわたって燃え続けた。
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 ■バリ島 インドネシアの首都ジャカルタの東約1000キロに位置する島。面積約5600平方キロメートル。人口は約300万人で、約9割がヒンドゥー教徒。世界的なリゾート地として知られ、日本人も年間約35万人が訪れる。爆発のあったクタ地区は、海岸沿いに若者向けのレストランやディスコなどが立ち並ぶ島有数の観光地。
<バリ島連続爆発>アルカイダによるテロ頻発 活動活発化の恐れ
 インドネシア・バリ島で12日に起きた爆弾事件は、ウサマ・ビンラディン氏の組織「アルカイダ」や関連組織による犯行との見方が浮上しているが、同組織によるとみられるテロ事件は最近、世界各地で頻発している。アルカイダ・ネットワークは世界に広がりつつある反米意識を利用し、活動を一層活発化させる可能性がある。(毎日新聞)
<バリ島連続爆発>「テロ対策の全面的な見直しを」 豪首相
 【シドニー堀内宏明】バリ島の事件で自国民から多数の死傷者が出たオーストラリアのハワード首相は13日、内閣安全保障会議を召集し、テロ対策を全面的に見直すよう命じた。昨年の米同時テロ以降、米国と共同歩調を取ってきた豪州は「新たな標的国にされる危険がある」と警戒を強めていたが、白人観光客が集まる海外施設の爆破は予想外だった。国民の衝撃は大きく、イスラム国に対する世論の硬化は必至となっている。
 ハワード首相は緊急記者会見を開き、「邪悪で卑怯な許しがたい行為だ。我々は対テロ戦争を強力に進めなければならない」と強調した。
 現場のディスコはラグビーシーズン終了後の打ち上げ旅行に出かけたアマチュア選手らでにぎわっていた。政府は現地に空軍の医療部隊を派遣し、外国人を出国させる臨時航空便も組むなど、非常体制を敷いている。
 豪州は99年の東ティモール騒乱を鎮圧する多国籍軍を率いたが、これ以降、インドネシアでは反豪感情が高まっていた。昨年の同時テロではアンザス条約(豪・ニュージーランド・米の相互安全条約)による集団的自衛権を発動し、アフガニスタンに派兵した。米国がイラク攻撃に言及した際も首相は強く支持し、イスラム諸国は米・英・豪の3国を一体視している。これまで豪州の海外公館などには数件の「テロ予告」があった。
 世論調査ではイラク攻撃に反対する国民が多く、政府も最近は慎重な態度だったが、今回の事件を契機に強硬論が台頭する可能性は大きい。(毎日新聞)
テロ組織、存在誇示か=手口など情報収集−警察庁
 インドネシア・バリ島で連続爆弾テロが起きた13日、警察庁では国際テロ対策室の職員らが同庁に詰め、被害状況や手口などの情報収集に当たった。同庁幹部は「実行組織や目的は不明だが、普段警戒されていない観光客が集まるディスコを狙うのは、テロ組織に存在を誇示したり、不安をあおったりする意図があるのではないか」と話している。 (時事通信)
爆発事件の繁華街、鉄筋曲がり爆発すさまじさ示す
 【バリ島(インドネシア東部)13日=奥村健一】インドネシア東部バリ島で12日深夜(日本時間13日未明)に発生した爆発事件現場の繁華街クタ地区は、半日以上たった13日午後になっても、こげくさい臭いが漂い、「爆心地」に近い建物数棟は鉄筋がむきだしになって、みずあめのように曲がり、爆発の威力のすさまじさを伝えていた。
 路上には黒焦げになった自動車約10台が放置され、エンジンの破片やコンクリートのがれき、片足分だけの靴などが散乱。半径200メートル内にある建物はほとんど窓ガラスが粉々だ。
 現場は幅約5メートルの通りに面して両側にディスコや土産物店、レストラン、ホテルなどが並ぶバリ随一の繁華街。爆発のあった夜は、週末の土曜日とあって大勢の観光客でにぎわっていた。特に、標的となったディスコはオーストラリア人や欧米人など約200人の客で混雑していた。
 現場のすぐ近くに住むレストラン勤務ロージー・バレネス(23)は「ものすごい爆発音で目が覚めた。現場に来ると、路上には爆風で投げ出されたと思われる遺体があちこちに転がり、泣き叫ぶ声も響いて信じられないような光景だった」と目を潤ませ、「これからここで暮らしていくのが怖い」と繰り返した。
 事件を受けて急ぎバリ島入りしたインドネシアのメガワティ大統領は、四輪駆動車で現場に到着。警察関係者らの説明を受けながら、約20分間、がれきを踏みながら視察した。この間、二言三言、警察関係者に語りかけた以外は、報道陣にも何も話さず、惨状にショックを受けた様子がうかがえた。
 現場から約2キロ離れた自宅で爆発音を聞いたという輸入業小池秀聖さん(42)は「爆発の瞬間、重い扉を思いっきり閉じたような衝撃を感じた。この20年、バリにはしばしば来るが、まさかこんな事件が起こるとは思わなかった。地元の収入源である観光業には大きな打撃になるだろう。私自身はもう少し様子を見て帰国するかどうか決めたい」と心配顔で話していた。(読売新聞)
<バリ島連続爆発>黒焦げの遺体や手足が散乱 現場ルポ
 【デンパサル(バリ島)中坪央暁】繁華街レギアン地区のディスコ「サリ・クラブ」の周辺を歩くと、黒焦げの遺体や、吹き飛ばされた手足が散らばっていた。
 土曜日の深夜、数百人の若者で満員の状態だったという店は完全に崩れ落ち、前の路上には大きな穴があいている。周囲のレストランやバーも骨組みを残すだけの無惨な姿をさらしていた。
 店にいたオーストラリア人男性のステファン・モンゴメリさん(35)は、入り口付近で爆発に巻き込まれ、手足をやけどした。「夢中で外に逃げた。一緒にいた友人4人のうち2人の行方がわからないんだ」
 オランダ人女性のエレイン・バン・エレンスさん(28)は「ディスコで私を待っていた友人を病院や警察で探し回ったが姿が見えない」と涙を浮かべた。
 デンパサル市内で最大の公立サンラ総合病院に向かった。女性職員のイマデ・ダスティニさん(42)は「ボランティアを募って手伝ってもらっているが追い付かない」と疲れきった表情を見せた。病院の一角には布にくるまれた遺体が並び、身内を探す家族がひきもきらない。
 デンパサル国際空港では13日、夜が明けると、予定を切り上げて帰国する外国人観光客が列を作った。オーストラリアからアマチュアのラグビークラブを率いてきたコーチの男性は「サリ・クラブへ行った選手8人が行方不明だ。どうしたらいいのか」と途方に暮れた表情を浮かべた。(毎日新聞)