02/10/30 (水)
9-14℃ 南西5〜8m/sやや強い
拉致、核開発は平行線 日朝国交正常化交渉始まる
左端・朴龍淵(パクリョンヨン)第四局副局長
中央・鄭泰和(チョンテファ)両交渉担当大使
右以降・第四局所属(?)の面々
 日朝国交正常化交渉は29日夕、初日の協議を終えた。焦点の拉致事件について、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)側は9月の首脳会談で本質的には解決済みとの認識を示し、日本側が求めた被害者5人の家族の帰国に難色を示した。核開発についても北朝鮮側は米国との解決を求める姿勢を示し、日本側が求めた開発計画の即時撤廃には応じなかった。

 鈴木勝也、鄭泰和両交渉担当大使を代表とする本会談は、昼食を挟んで午前10時(日本時間午前11時)から午後5時20分(同午後6時20分)まで行われ、拉致事件と核開発を中心とする安全保障問題について集中的に議論した。拉致事件について北朝鮮側は、金正日総書記が拉致を認めて謝罪し、解決に向けた調査に誠実に対応していると述べたうえで、「大筋で解決した問題であり、(あとは)実務者レベルで協議すべきだ」と提案。日本側は「大筋解決とは認識していない」と反論した。日本に滞在中の被害者5人の家族について、日時を決めて帰国を確約すべきだとの日本側の主張に対しても、北朝鮮側は「日本は5人をいったん北朝鮮に戻すという約束を破った」と非難し、5人をいったん北朝鮮に戻して家族と話し合うべきだとの立場を示した。日本側は「拉致という犯罪行為が原点にある。自由な意思決定ができる環境をつくることが大事だ」と反論した。日本側は、亡くなったとされる8人の再調査について新たな質問項目を列挙したリストを北朝鮮側に渡したほか、元北朝鮮工作員の辛光洙(シン・グァンス)容疑者やよど号メンバーの身柄引き渡しも求めた。これらの対立点については本会談終了後、双方の担当者が同夜遅くまで日本大使館で非公式協議を続けた。一方、安全保障問題では、日本側が日米韓首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合の声明などを引用しながら、核開発計画の即時撤廃を求めたほか、配備済みのノドン・ミサイルの廃棄などミサイル問題にも言及した。北朝鮮側は「日本が憂慮しているのは承知しており議論はできる」としたものの、「米国の敵対政策が問題の本質だ。解決は米国との協議によってのみ可能だ」として、核開発計画の即時撤廃は拒否した。

 今後の交渉の進め方については、日本側が拉致事件と核開発問題を最優先課題とする方針を示したのに対して、北朝鮮側は「過去の清算を含めて議論をする過程で、解決策が出てくる」という認識を示した。交渉は30日までの2日間の予定で、30日はクアラルンプール市内のホテルで引き続き本会談が開かれる。
 日朝国交正常化交渉が空回りしているようだが、こんなことは多くの国民が予想していたとおりのシナリオだ。日本側の拉致家族の子供を日本側に呼び寄せるというのに対し、北朝鮮側の拉致帰国者を一旦平壌に帰すべきだとの駆け引きが堂々巡りをしている。ここで日本側が引き下がったら外務省の面子が立たない。そんなところだ。外務省が威信回復のために意気込むのも分かるが、北朝鮮外交団はそのことを承知のうえで隙を狙っている。日本外務省はそこまで先読みしているのかどうか?以前にも書いたが、北朝鮮政府は徹底した情報収集と分析から、日朝国交正常化交渉の日本代表団の面々の知りうる限りの言動を知り尽くしている。ワイドショーにちょっとゲストで出ただけで、その言動は分析され、かつ弱点をあぶり出し交渉カードとなる。外交コードすら読まれているのだ。
 国交正常化優先派「福田-田中ライン」と拉致問題解明優先派「安倍-斎木ライン」の対立はもとより、斎木昭隆・外務省アジア太洋州局参事官を交渉団から外すか外さないかで揉めていた内輪の事情まで、彼らは知り尽くして交渉に臨んでいる。日本はどうか?どこまで今度の北朝鮮側交渉団の顔ぶれとその弱点を把握しているのか・・・鄭泰和(チョンテファ)両交渉担当大使、朴龍淵(パクリョンヨン)第四局副局長、ほか第四局所属だというの素性の知れない面々五人・・・この五人全てが第四局に所属しているなどとは考えない方がいい。仮に北朝鮮側の妥協を引き出したとすれば、「これで外務省の面子が保たれた」と、喜び勇んで帰ってくる外務省が目に見えるようではないか。最悪の場合を想定するなら、北朝鮮側の「拉致家族を一旦平壌に帰国させて子供らと面会させる」ことに同意せざるを得なかったと、意気消沈して帰ってくる外務省がいるばかりだ。その辺のレベルでの交渉ならやらないほうがいい。
 私のつたない見解からすれば「あくまで拉致被害家族の子供たちを日本に帰国させる」といった線を固持して交渉に臨み、かつ、それを北朝鮮側が飲んだと仮定して、次に出してくるであろう「その見返りとしての経済協力要請」カードへの対応を先読みする、といったことになろうか。まさに北朝鮮側の狙いも「日本からカネを引き出す」ことにあるのだから・・・鄭泰和(チョンテファ)両交渉担当大使はかつて「拉致というものは存在しない」とぬけぬけと言い放った人物である。北朝鮮政府がこのような人物を交渉団の代表として送り込むあたり、日本は最初からなめられているのだ。私はいま次のような二つの日本の諺が頭をよぎっている。「盗人猛々しい」から「庇を貸して母屋を盗られる」に至る諺のことである。
 日本には諜報機関に類する秘密情報組織は存在しないことになっているが、仮にそれらに類する組織が存在するとすれば、北朝鮮側交渉団の素性の知れない自称第四局所属の五名の正体を洗っているはずだ。そしてそれらの情報は即座に日本側代表団に伝えられる。まさに北朝鮮側がやってきたように、である。考えにくいことではあるが・・・
 これ以上、他国の国民を拉致するといった犯罪を起こさせないないためにも・・・金王朝政権に洗脳されている国民が、何より飢えに苦しんでいるという事実をもって・・・もう金王朝独裁には終止符を打ってもいいのではないか。いや、そうすべきだ。政治的配慮から日本政府がそれが出来ないのであれば、真の意味での日朝国交正常化とは成り得ないのではないか。日本国憲法の根幹をなす「主権在民」が、北朝鮮の地で塗炭の苦しみに喘いでいる国民にも一日も早く適用されるよう、願うばかりだ。もっとも日本国内においても「主権在民」の恩恵を感じている国民がいるなどとは、これまた考えにくいことではあるが・・・

 日本側交渉団が言及する「核開発計画の即時撤廃」要求も、予想通り突っぱねられた。歯牙にもかけられない、といったほうがいいだろう。ミサイルの弾頭という恫喝が向けられたままの交渉とはいかなるものであろうか・・・それはあたかも、銃口を突きつけておいて『いやいや、お宅の家族を無断でさらったことは悪かった。怒るのも当然だ。だからこのとおり謝っている。こうして謝っているのに何だかんだと文句を云うなら、こっちとしても考えがある。金王朝を怒らせたらどうなるか、分かるだろう?』というようなものだろう。金王朝独裁政権は同時に軍事独裁政権といった様相を示す。
 「我々は25日に不可侵条約という重大な提案をした。にもかかわらずアメリカは引き続き一方的な武装解除を迫ってきた。アメリカの一方的かつ傲慢無礼は、我が国と人民を決死の覚悟で対処せざるを得ないところまで追い込んだ。死を覚悟した者にかなうものはない。朝鮮半島における核戦争の危険は現実のものとなるだろう。軍事優先政治を最後まで奉じ、自主権と生存権を死守しよう。これが我が軍隊と人民の信念であり、意思である」(昨日の北朝鮮平壌放送から)

 まるで大戦前夜の我が国を思い出させるようなイメージが浮かんでくる。核戦争も辞さないとする金王朝政権の恫喝が、北朝鮮全国民が一致した結論だとは誰も思わないだろう。ここではその金王朝独裁政権は自らを「軍事優先政治」と明確に言い切っている。古来においても軍事優先の文明国家が安穏かつ平和だったことが一度としてあっただろうか?否、むしろ国民を地獄の業火に投げ入れる悲惨な結果になっている。一握りの金王朝一族の支配を可能にしているのは、それに同調して現状維持の保身を図っている軍幹部といった太鼓もち達ではないか・・・ここでは金王朝の妥協案さえアメリカの目論見にまんまと嵌ってしまっている。北朝鮮が軍事優先政治なら、アメリカもロシアも例外ではなかろう。全ての国において、と言い換えるべきかも知れない。かくして戦争の絶えない人類の未来もみえてくるというものだ。
 戦争を必要悪としてはならぬ。戦争を必要とするいかなる国家も自らの偽善を露呈してしまっていることに気付くべきだ。自分の子どもを戦場に送ることが「御国のため」だとか「国益にかなう」ことだと喜んで我が子の命を差し出すことのないように・・・もっと臆病になっていいのではないか?それは、恫喝や戦争肯定論に妥協してしまうような臆病さではなく、個々人に内在する原罪意識レベルでの戦争拒否権のことである。それは同時に、どんな高邁な思想哲学より「殺されてはたまらない」ために「誰も殺したくない殺さない」といった、人間として至極当然な良心のことでもある。そのために個々人が心の葛藤に懊悩することは避けられない「産みの苦しみ」であり、それは真の平和を実現するための苦しみである。決して戦争を産みだす苦しみであってはならない・・・
 まだ言葉足らずで誤解を招くことがあるだろうことを知りつつ、自戒を含めてこの日誌を書いている。
 
【視聴予定】
19:30-20:00 NHK総合 クローズアップ現代 長寿のカギは腸内細菌にあり
21:15-22:00 NHK総合 その時歴史が動いた 初公開・野口英世の若き日の手紙▽借金魔?人類のため命を捧げた心中は
22:00-23:00 テレビ朝日 ニュースステーション ”成果”は?日朝国交正常化交渉2日目▽不良債権処理とデフレ対策…竹中チーム報告の中身
「じねん」TOP