02/10/22 (火)
 天気予報が外れた。天気予報では今日一日晴れているはずなのだが、朝の陽射しも昼近くになると一転して雨に変わった。工場内は薄暗く、照明がないと傷が拾えない。工場内の照明を全部付けても足りない。午前中に下地調整を行い、そろそろ仕上げの段階に入る。その前にまた研がねばならない。粗目から細目へ、120、240、400、1000番とペーパーで研いでいく。今の段階で240から400番を使用、最終的には1000番で研ぐ。1000番を使う頃になると、研ぐというより磨きに近い。その合間にパテで傷を拾っていくわけだ。全工程を詳細に網羅すればピアノの仕上げに匹敵するかも知れない。ピアノは仕上げ技術の最高モデルとなっている。艶出しをかけると自分の顔が鏡のように写るぐらいの技術、それ相当の手間がかかるというわけだ。生涯に一度くらいはピアノを手がけたいものだ。それが職人の誇りともなる。私が仕事を始めると、必ず猫たちが集まってくる。可愛いが時に邪魔になり、追い払おうとすれば遊んでくれているものと勘違いしてじゃれてくる。猫の手を借りたいほどの仕事はなし、今は目の前の仕事に没頭していたい。雨が止んだ・・・西に青空が見える。
 14時半現在、仕上げの段階に入っている。冬場に入ると乾燥が遅くなり、今の時点で速乾性のシンナーに変えておくべきだった。乾燥しなければ次の段階に進めない。速乾性を使う時期を誤ると、仕上げ工程で粉になってしまうことがある。つまり表面がザラザラになって艶が出ない。材料の性質を熟知しなければならぬ。細かいところで足踏みしている。明日が納期、今日はパーツ含めて深夜作業を覚悟している。晴れてきた。
 15時半現在、本体は一応仕上げた・・・つもりでいた。しかし、よく見ると随所に垂れが確認される。これをどうするか?手直しするにはペーパーで水研ぎをし、仕上げる段階で新聞で囲って飛散する粉塵を防がねばならない。これが難しい。パーツの片面もまだ仕上げていない。完全乾燥を待たないと仕上げられないのだ。100%完璧な仕事は最初から望むべくもないが、購入する客のことを考えれば完璧に近い仕事をしなくては申し訳ない。安けりゃ安いように手を抜けば良い、というものでもなかろう。明日の朝まで、何とか頑張りたい。
 今日は朝から何も食べていない。即席ラーメンが猫に齧られていた。玄関の横の柿が熟しているのを発見、脚立に登って三個ばかり食べた。妹がやってきて驚いている。「弁当を買ってきてあげる」と言う。弁当代を請求されたので「そんなカネはない」と断った。武士は喰わねど高楊枝・・・その分330円也の安ワインを頼む。ワインを喇叭飲みしながらの徹夜作業だ。泣きたいときは心で泣くさ、男はつらいね・・・従兄は現場の作業中に倒れて亡くなった。私もそうありたい。深夜、ガランとした工場内で冷たくなっている自分を想像する。ひとりぼっちの流れ星、人生流転の真っ暗闇に何処に流れて行くのやら・・・
【視聴予定】
■17:30-20:00 NHK総合 クローズアップ現代 若者が体感・中国の生産現場
■21:15-22:00 NHK総合 プロジェクトX「カーナビ迷宮を走破せよ」 北の援軍現る▽消える画像▽パパは方向音痴
■22:00-23:00 NHK総合 NHKニュース10 帰国から1週間・思い揺れる拉致被害者たち▽竹中ショック・どうする不良債権
「じねん」TOP