02/10/18 (金)
 16日納期の仕事を終えた二日後、今日は次の仕事が入ってきた。手馴れた仕事のこと、別に注意事項もなく23日納期に向けての作業準備に入る。クレーンでの荷降ろし作業中に猫族たちが集まり、監督が驚いている。どういうわけか猫はタイヤの傍に寄りたがる。監督は、エンジンが暖かいからではないか、と云う。その猫たちを車の下から追い払って、帰っていった。監督ら元請け会社は明日から休みになる。私は逆に彼らが休んでいる間に仕事をする。時間規制に囚われない零細の気楽さよ、急ぎの時は徹夜だってやれるんだ。これで採算が取れれば云うことはないのだが・・・世の中はそんなに甘くない。限界ギリギリの単価に少しでも利益を捻出しようと、あれこれ工夫を凝らし、こま鼠のように動き回る。「今月は粉砕機の仕事が途絶えた」と監督が嘆いた言葉が、下請けの我が社には痛烈な一打となってきている。あと二ヶ月ちょっとの年越しも難しくなった。それでも苛立ちと先行き不安とを心の奥に封じ込め、思うようにならないのが人生の常だと達観してみせる。時に感情のないロボットのように、ただ黙々と作業を進めている。明日の希望を捻出するために、今日の労力に全てを注ぎ込む。たとえ核戦争で世界が終わろうと、私は最後の瞬間までその手を止めないでいたい。
 24年ぶりに故郷の土を踏んだ拉致被害者たちの表情は一様に明るく、そして地元の人々や家族たちの涙の対面となった。印象的だったのは曽我ひとみさんの言葉であった。「私は夢をみているようです。人々の心、山、河、谷・・・みんな美しくあたたかく見えます。空も、土地も、木も、私にささやく。おかえりなさい、頑張ってきたね。だから私も嬉しそうに帰ってきました」・・・24年前、突然拉致されて異国の地で暮さねばならなかった数奇な運命にあって、幾度か日本の生まれ故郷を偲んで涙したことであろう。その懐かしい故郷が今、目の前にあって自分を迎えてくれている。そんな感動がひしひしと伝わってくる。私にとっては見慣れた日本の風景も、彼らにとっては全てが懐かしい対象であり、そういう意味でも私を含めて日本人は故郷の山河というものを再認識すべきなのかも知れない。いかに国家権力であれ、人間の心からは決して引き離すことのできないもの、それが故郷でありそこに暮す人々の懐かしい心であったりするのだろう。日本政府が用意した記者会見の場での緊張した面持ちとは打って変わって、故郷に帰ったときの彼らの晴々とした表情が何よりそれを物語っている。我にして涙が頬を伝うほどの故郷は有りや・・・
【視聴予定】
■21:00-21:54 テレビ朝日 運命のダダダダーン!「ダイアナ死の真相」 彼女は殺された?死の瞬間に謎の車が▽不倫と自殺未遂
■22:00-23:00 NHK総合 ニュース10 ▽夢見た帰郷から一夜拉致被害者5人は故郷で何を、心は開かれるか▽国会召集・小泉首相の決意は
■23:00-24:10 NHK教育 金曜フォーラム 変わる金融・変わる消費者・自己責任
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