「拉致して殺してしまう」 小泉首相が北朝鮮を批判
小泉首相は14日、衆院補選の遊説で訪れた山形県鶴岡市での街頭演説で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致事件について「(5人以外にも)生存されている方々がいると期待している」としたうえで、「確かにけしからん国だ。(日本人を)誘拐して、拉致して、殺してしまう。工作船にロケット砲を積んでいる、機関銃を積んでいる。日本の社会経済を不安にさせるような工作を、工作員を送り込んでしようとしている」などと語った。
北朝鮮側は9月の日朝首脳会談の際、日本人拉致被害者について「5人生存、8人死亡」とし、死因は交通事故やガス中毒、自殺などとした。首相のこの日の発言は、こうした説明を信用していないとの認識を示したものだ。
ただ、首相はこの後、山形空港内で記者団から「拉致被害者は殺されたという認識か」と問われると、「そう言っている人がいると」と述べ、第三者の言葉を引用しただけだと釈明した。首相は日朝首脳会談直後の記者会見でも、「亡くなられた方々」などと断定調に語って被害者家族の反発を買ったことがあり、今回は、第三者の言葉として軌道修正したものとみられる。
当初このニュースを聞いた時には我が耳を疑ったものだ。一国を預かる指導者たる人間がこれほど軽はずみな言葉を吐けるとは、まだ信じられない思いだ。いかに北朝鮮政府が日本人拉致を認めたといえ、殺人については容疑の域を出ないはずだ。だからこそ拉致被害者家族が生死の確認を含めた調査を日本政府に要望してきたのであり、その調査の段階で「殺してしまう」といった確信的な発言は大問題であろう。不審船の目的の一つが日本近海における傍受による情報収集であることを考える時、北朝鮮がいかに日本全土に情報網を張り巡らしているかもおよそ想像がつく。むろん私たちがこうして小泉総理の放言を知り得るように、北朝鮮政府は主要テレビ局の全チャンネルを監視かつ分析していることは疑いようがない。今回の小泉総理の失言も、北朝鮮の国益を揺るがしかねない最優先事項として即座に金正日総書記に伝えられたことだろう。
これまで小泉総理は「女の涙」云々の女性蔑視から、ホームレスの人々への乞食云々の軽はずみな失言で問題になってきた。ことさら機嫌の良い時は「感動した!」といった直情的な言動の目立つ総理のこと、喜怒哀楽も庶民レベルでは微笑ましいが権力者の場合「頭にきた!」などとキレて戦争に突入しかねない懸念がある。一億の民を不幸のどん底に陥れないことを切に祈るばかりだ。蔑視より慈愛を、政治に反映して国民を「感動した!」と言わしめる総理であってもらいたいものである。
【視聴予定】
■21:15-22:00 NHK総合 プロジェクトX「運命のゴビ砂漠」
人生を変えた300万本のポプラ▽窓際族奮闘95歳が
■22:00-23:00 テレビ朝日 ニュースステーション
四半世紀ぶりに日本の地を踏む…拉致被害者地村さん、浜本さん、蓮池さん、奥土さん、曽我さん、きょう帰国家族と再会
|