廃墟の中を疾走する夢をみた。時々こんな夢をみる。高台にある巨大な廃墟は迷路のようになっていて、なぜか私はそこから抜けられない。目覚めれば廃墟のような我が家、深層心理の現われか・・・今日もだだっ広い工場での孤軍奮闘が待っている。そろそろ最終的な仕上げにかかるが、完成した製品には私の作業過程の痕が目に見えるかたちで全て出てくる。いわば心を映す鏡のようだ。いいかげんな仕事はできない。
午後から仕上げをするが、納得がいかず、明日の完全乾燥を待って再び仕上げをすることにする。ほんの些細なミスだが、自分で納得のいかない製品を納めるわけにはいかない。引渡しまでまだ時間的余裕がある。この仕事は段階毎に時間を置かないと、次の作業には進めない。よって時間がかかる。気の長い仕事ではある。
いつも食糧を配達してくれている兄ちゃんが、徳用サイズのサバの缶詰を持ってきた。同じ値段でこれまでの三倍の容量がある。猫が食べるということで徳用サイズを持ってきたのだが、実は私も食べるのだ。銚子産ということで、変に味付けしていないのが気に入った。大きめにぶつ切りしたサバが丸ごと入っている。猫九匹が唸り声をあげて食べる様子は壮観である。恐ろしいほどに、生きることに必死な生存本能が伝わって来る。
茶色い子猫の鳴き声が異様に甲高いと思ったら、片足を引きずっている。どうやら屋根から落ちたらしい。骨が折れてなければよいが、しばらく様子をみることにした。最も心配なのは車に轢かれることで、一昨年に生まれた猫は片足を骨折したまま行方を断ってしまった。私が足場から転落したとき、やはり心配したのは母であった。妹の話では、私が足場から落ちたと聞いた瞬間、母は真っ青になったということだった。小学生の頃、海水浴場で私が沖へと行くのをハラハラして見ていたと、母から聞いたことがある。大人になってもそれは変わらず「おまえが心配で死ぬに死ねない」と、言い残したまま母は末期癌で死んでしまった。今も私は「ごめんね」と母に謝りつづけている。足が痛むのだろうか、怪我をした子猫が時折悲鳴に似た鳴き声を発する。私も足の痛みにはずいぶんと悩まされてきたが、それだけに心が引き裂かれる思いである。
他の子猫たちは怪我をした猫そっちのけに元気に飛びまわっている。餌を食べる段階になると、親猫でさえ、子供に与えた餌をも奪う始末だ。親子であれ、兄弟であれ、夫婦や恋人にしろ命は別なのだ。つまり他の命の痛みは伝わらない。私は末期癌の母の看病をしながら、実際に母の苦痛を感じることはない、ということで悩んできた。しかしながら、人の痛みを五感で感じることはできないことも「痛いであろう」想像力によって理解はできる。心ならずも人の心を傷つけてしまい、そのことに気付かないでいる例は多い。個々の命はそれぞれ別であっても、心の共有は可能だ。相手の立場でものを考えて初めて、他人の痛みも想像できる。軽々しく「人の痛みを知れ」などと押し付けるつもりはないが、少なくとも他人の心を踏みつけにしてやしないか?絶えず自問自答する必要性はあるだろう。踏みつけている足は、踏みつけられている足ほどに痛むことはない。しかし、自分の足の感触からもそれは容易に察することもできよう。心の感触を敏感にしていれば・・・
【視聴予定】
■21:00-21:54 TBSテレビ 世界・ふしぎ発見!「神々の刻印・北アメリカ大地の奇跡」
砂漠の巨大穴・地底大水脈20億年の謎(録画)
■21:15-22:05 NHK総合 スペシャル 日本の課題地球温暖化(01)大気をめぐる攻防▽明かされる京都議定書交渉の内幕▽国益死守米中の激突
■22:00-23:24 TBSテレビ ブロードキャスター
親借金・子は大もうけ道路公団1000億円の謎▽英国取材で明らかに猿より賢い?カラス君▽北海道で消えた20歳ロシア美女
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