サウジ皇太子、ヨルダン国王と中東情勢について会談
[ドバイ 12日 ロイター] 国営サウジ通信(SPA)は、アブドラ皇太子がヨルダンのアブドラ国王と会談し、イスラエルとパレスチナの紛争をはじめ中東情勢について意見を交換したと報じた。このなかで、「パレスチナ住民に対する殺りくや包囲、破壊工作をはじめ、中東情勢について意見を交換した」と伝えた。SPAは、米国がイラクに対して軍事攻撃を開始する可能性について、両首脳が協議したのか、という点については言及していない。(ロイター)
双方ともアブドラ(Abdullah)では紛らわしいので、区別する意味で対比させてみる。
●サウジのアブドラ皇太子
Abdullah al Saud (1923-)・・・ サウジ初代国王アブドゥル・アジズ(Abd
al-Aziz al Saud 1880-1953 即位1932-1953)通称イブン・サウドibn-Saudを父とし、母Fahada
al Shuraimの間に生まれる。
●ヨルダンのアブドラ国王
Abdullah HashimU(1962-即位1999-)・・・ヨルダン国王フセイン(Husain
Hashim 1935-1999 即位1935-1999)を父とし、母アントワネット・アヴリル(Antoinette
Avril Gardiner)の間に生まれる。【詳細】今月4日の日誌参照のこと
親子ほども歳の離れた王族同士の会談である。ヨルダン国王アブドラは4日に前述したように、その妻ラーニアがパレスチナの英雄ヤシン家の出だけに微妙な立場に置かれている。またサウジ皇太子アブドラは、かつての湾岸戦争においてもアメリカの軍事基地使用を拒むという姿勢をみせてきた。アメリカはその皇太子を宥めるようにして半ば強引にサウジに居座っているわけだが、それが出来るのも国防航空相スルタン(Sultam
al Saud)王子の存在があるからだろう。アブドラ皇太子とは異母兄弟関係にあるスルタンの、その息子バンダルはアメリカ大使として歴代のアメリカ大統領たちのお気に入りとなってきた。リヤドにはあからさまにスルタンを意識した呼称の米軍基地「プリンス・スルタン空軍基地」がある。これからサウジに政変が勃発するとすれば、アメリカはおそらくスルタン親子に肩入れすることになると思われる。今回のサウジ皇太子とヨルダン国王の会談も、アメリカのイラク攻撃やイスラエルのバレスチナ住民への弾圧などに、批判的な意見が交わされたことは容易に推測できる。これに対してアメリカ政府が苦々しい思いで見ていることも・・・
サウジ国王、健康状態が悪化=外交筋
[ドバイ 13日 ロイター] 外交筋によると、サウジアラビアのファハド国王の健康状態がここへきて悪化している。同国王は79歳で、1995年以来、健康に不安があることから、アブドラ皇太子が国政の実権を握っている。ファハド国王は7月、白内障の手術を受けた。サウジアラビア政府関係者は、術後の経過は良好だと発表したが、湾岸諸国の外交筋は、王室内で後継者をめぐる観測がもちあがっていることを明らかにしていた。(ロイター)
現在、実質的にサウジの政権を握っているのはアブドラ皇太子だが、これは1993年2月26日の世界貿易センター爆破テロ事件に関して、テロ実行犯と目されたアラブ人15名がサウジからの入国者であったことに起因する。これによってファハド国王一族はスイスに逃亡、国家警備隊を把握したアブドラ皇太子が実権を握ることとなった。そのアブドラ皇太子はアメリカ政府の訪米招請を拒んできた。今、健康状態が危ぶまれているファハド国王(Fahd
al Saud 1921-即位1982-)の母親ハッサ・アル・スデイリ(Hassa
al Sudairi)は、サウジ初代国王イブン・サウドの母方スデイリ家と同族ゆえに王位継承の重要な位置にあった。イブン・サウドの妻は100人を越え、王子に至っては7000人に達するといわれるサウジ王家にあって、アブドラ皇太子の政権把握は必然的に王家継承一族スデイリ家の崩壊を示唆するものとなる。反アメリカ色を強める新生アブドラ皇太子に周辺アラブ諸国も好意をもって迎えているようだが、今後アメリカ政府がどう出てくるか?小ブッシュのイラクへの敵愾心にはサウジ皇太子アブドラも視野に入っていることだろう。サウジ国王ファハドの健康状態が危ぶまれている中、イラクではにわかにフセイン大統領の次男クサイが襲撃されるという事件も起こってきた。
イラク大統領二男、反体制派の襲撃で負傷=新聞
[ドバイ 14日 ロイター] イラクの反体制組織「イラク国民会議」(INC)は、武装メンバーらが今月1日にフセイン大統領の二男クサイ氏を襲撃、負傷させていたことを明らかにした。 アラビア語紙アッシャルク・アルアウサトが、ロンドンに本部を置くINCの声明内容として報じた。それによると、武装メンバーらはバグダッドでクサイ氏の車列に銃撃を加え、同氏は腕を負傷した。武装メンバーらの乗った車は、治安部隊の攻撃を受けて破壊されたという。この件に関する政府当局者からのコメントは得られていない。共和国防衛隊を指揮下に置き、治安部門の責任者である同氏は、新聞社などを運営する長男のウダイ氏とは異なり、公の場にはほとんど姿を現さない。(ロイター)
ここイラクでもフセイン大統領の後継者をめぐって同族同士の骨肉相食む争いが展開されている。特に長男ウダイの横暴は目に余るものがあり、父親フセイン大統領にしてウダイを政権から遠ざけるほどだったという。1995年8月8日、フセイン大統領の娘婿フセイン・カメル中将が同族率いてヨルダンに亡命したが、それは実権拡大を謀るウダイとの対立が原因だった。
イラクとなる以前のメソポタミアは、「アラビアのロレンス」として後に有名になるロレンス(Thomas
Edward Lawrence 1888-1935)と共に戦ったメッカ太守フセイン(Husain
HashimT1853-1931 メッカ太守即位1908-1916
ヒジャス王即位1916-1924 )の、その三男ファイサルT世(Faisal
HashimT1883-1933 イラク即位1921-1933)によって1921年にイラク建国が宣言される。その三代目イラク国王ファイサルU世(Faisal
Hashim U 1935-1958 即位1939-1958)の統治時代にクーデターが勃発してファイサルU世は暗殺される。そして登場したのが現イラク大統領サダム・フセインであり、これにてイラクにおけるメッカ太守フセインのハーシム家の血脈は断ち切られた。しかし、ファイサルT世の兄アブドラT世(Abdullah
HashimT1881-1951 ヨルダン即位1949-1951)はトランスヨルダン君主を経てヨルダンの建国者となり、そのアブドラT世は暗殺されながらも王位は引き継がれ、現在のアブドラ国王の統治に至るのである。つまりは王位継承の血脈を辿ればイラクとヨルダンは繋がっているというわけだ。
クーデターによって政権を得たサダム・フセイン(Sadam
Husayn 1937- 就任1979-)は、その長男ウダイによってフセイン体制は崩壊の危機に瀕している。ウダイの弾圧でヨルダンに亡命した一族の中にはサダム・フセインの長女ラガドも含まれていた。ラガドは一緒に亡命したフセイン・カメル中将の妻であり、その同族を追い出したウダイにとっては実の姉にあたる。今回の次男クサイを襲撃した武装グループの背景にはそんな骨肉相食む黒い影が見え隠れしているように思えてならない。
今月14日にはシリア在籍の日本人女性による巨大石窟「シャーシ・ハムダン遺跡」発見のニュースが伝えられているが、パルミラ(Palmyra)遺跡の二倍から三倍の規模に及ぶ石窟というから、これは大発見であろう。1〜2世紀のローマ帝国時代の石窟らしいが、パルミラ遺跡もまた紀元前1世紀〜3世紀のものとされている。東からパルティア(Parthia)人がシリア・パレスチナに進軍、北からアルメニアなど土着王国がやはりシリア・パレスチナを狙い、やがてバレスチナにユダヤ国家が独立すると、トランスヨルダンではナバテア人が北上してダマスカスを占拠するのである。こうした古代シリアの混乱期に、今度発見された「シャーシ・ハムダン遺跡」がどんな役割を担ったのか?想像するだけでワクワクする。歴史は繰り返すというが、現代の中東動向と古代シリアを比較検討してみるのも面白いだろう。
【視聴予定】
■21:00-22:00 NHK総合 王家の指輪物語〜ドイツ・北欧神話紀行〜
指輪物語のルーツを求めて▽王や神々のリングの伝説 荻野目慶子
■21:00-21:54 テレビ朝日 運命のダダダダーン!
恐怖…エクソシストは実在する…バチカンが認めた悪魔払いの儀式を完全公開
■21:54-23:10 テレビ朝日 ニュースステーション
デフレ夏休み▽生出演黒柳徹子のソマリア報告”飢餓””女性性器切除”…▽命日に最後のプレスリー |