冠省

日本の危機への覚書

 最近柄にもなく「政治」のことに関心をもってます。いままで一サラリーマンとして政治的にはノンポリ(ほとんど死語に近い言葉ですね)でしたが、現在は、サイレント・マジョリティ(あるいは「浮動票」)を自認しています。

 ところで、昨今の経済情勢ですが、製造業がまだちょっとばかり元気が良くて、物の供給に不安がないから、今のところわたしたちもこの平成不況を「平静」に受け止めていますが、円安・株安・金利安が今後も続いて、これに消費税10%をもちこめば、消費が完全に冷え込みさしもの製造業もノックダウン。デフレ基調にインフレが重なって魔のスタグフレーションに陥るでしょう。

 そうなるとほんとうに危ない。物不足が顕著になりますから、社会不安が顕在化し治安も乱れてくるでしょう。国は消費税アップによって財源確保をしたいのなら、まず円安・株安・金利安を解消することが先決です。そのなかでも、政府当局のやるべきことは、金利安(超低金利政策)をやめて公定歩合を段階的に引き上げること。なお、円安・株安は当局に決定権はなく、景気回復の結果としてついてくるものです。

 公定歩合引き上げによって、いくつかのバンクとゼネコンが潰れるでしょうが、これは「資本の論理」からいたしかたのないことです。むしろ、失業したこれらの業界関連の労働者を吸収できる労働市場の確保こそ、政府(労働省)がいま力をいれるべき大事な仕事のひとつでしょう。

 また、景気刺激策としては、大幅な減税を実行することも必要ですが、これは赤字国債という火だるまの打出の小槌によるのではなく、ちいさな政府の実現つまり役人の大幅リストラによらなければ意味をもちません。したがって、国家公務員や関連団体の職員を中心とした失業者も大量にうまれます。失業率は5%を超えるでしょう。雇用保険制度も危機に立たされるかも知れません。

 さて、これらの労働者を生活の成り立ちうる他の仕事に就かせるにはどうしたらよいでしょうか。労働市場について、国策的に自由化をはかってこなかった方針がここでおおきなネックになってきます。解決法のひとつは規制緩和を徹底して行い、外資系企業の国内進出を促進し、これらの企業に雇用させること。あるいは、国土保全業務(中山間地域の荒廃防止や自給型食料基地設営など)に関した労務提供の機会を与えること。さらには、外国人労働者をある程度受け入れ、彼らの労務管理および福利厚生の支援等の仕事に従事させること、などが考えられます。

 雇用情勢のこのような動きのなかで、徐々に労働市場の開放化がはかられていくことと思います。それは、現状の閉塞感に喘ぐサラリーマンにかぎらず、自由業のひとびとや会社のオーナーにとっても魅力的なことでしょう。人的流動化が活性化すれば、それだけでも経済は好況感を呈してくると思われます。

 以上は、「経済の悪化をくい止め、復興させることが、国民の安寧な生活を保持するための政治の責務である」との認識から、『エコノミスト7/21号』の各論稿を自分なりにまとめたうえで、経済をベースにした政治のあり方をラフスケッチしたものです。

  1998.8.20

日暮 景 拝  

I 様

 


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