日本の構造調整と金融問題

 

中前 忠
中前国際経済研究所代表

平成10年10月27日

 

 これから日本経済の問題をお話する訳ですが、時間が限られていますので最初に見通しを申し上げます。まず、短期的な見通しから申し上げます。日本経済は1997年度は0.3%の成長率でした。多分、98年度はマイナス3%ぐらいで、99年度はマイナス5%ぐらいの成長率で戦後最悪の経済成長率になるでしょう。

 ここで誤解のないように確認しておきますが、私が言っているのは名目成長率であり、実質成長率ではありません。デフレ経済の下で物価が現実に下がっている状態で、実質成長率の意味はあまりありません。この不況の意味合いは非常に重要です。通常現在の不況については消費不況と言われ、ケインズ的な需要政策が必要と言われていますが、私はそうではないと思っています。

 現在の不況の最大の原因は、設備投資が落ちこんでいることです。設備投資主導型の不況であります。設備投資がなぜ落ちているかと言うと、日本経済が極めて過大な投資をし、過剰設備に悩んでいるからで、これを早く落として正常な状態に戻す必要があるわけです。こういう意味で申しますと、過大な設備投資の是正が構造的に非常に重要で、これは現在のアジアの危機と同じ性格の問題であると言ってよい。

 この消費不況と設備投資不況の違いを整理しておきますと、消費不況は状態が悪くなればなるほど全体が悪くなる、つまり限界が無いということです。設備不況は設備が充分落ち込めば自動的に事態が改善してくる。設備投資が落ちてくると、たとえば企業の方から言えば、まず設備投資がキャッシュ・フローに比べて小さくなりますから資金的な余裕が出てきます。

 それからもう一つ、設備投資が充分落ちますと、需要と供給のバランスが自然と改善されてきます。設備投資の調整が完了すると、日本経済は自立的に回復する可能性を持ってくるということになります。したがって、今のような経済状況に対して、ケインズ的な需要政策で対応するのは大変な間違い、ということになります。日本経済は過剰な設備投資を早く解消する必要がある訳で、需要政策で需要を下支えすればそういった調整が遅れ、状態はますます悪くなります。

 この意味で、アメリカ始め諸外国が日本に需要政策を採れと圧力をかけるのは、日本経済にとって大変に迷惑なことで、日本経済が本来ならば2000年から自立的に反転する芽を摘み取るものだと言わざるを得ません。この点は強調し過ぎるということはなく、特にアメリカ政府の日本政府に対する圧力ほど間違ったものはありません。これは単に需要政策をいうから間違いだと言っているだけではありません。アジア危機が始まる前のアメリカの日本に対する圧力は構造改革を促進しろという圧力でした。

 しかし、アジア危機が表面化しますと、突如として需要政策を採れと言い始めます。まったく一貫性がなく、これでは日本の政策が混乱するだけであり、アメリカのこうした一貫性のない圧力ほど日本にとってリスキーなものはない。なんとなればアメリカの圧力は非常に影響力があるからであります。

 そこで設備投資の問題をもう少し詳しく見てみます。日本のGDPに対する 資本投資の割合を見ると、91年初めには19.9%、約20%になっています。20%近い投資率の問題は、この20%近い投資率が正当化されるには、経済が年平均10%くらい成長していなくてはならないけれども、そういう大きな投資率が維持されたのは60年代だけだったということです。

 国際比較をしてみると、大体3%程度の潜在成長率の国にとって妥当と思われる投資率は10%くらいで、現在のアメリカ、ドイツがそうです。言い方を変えますと、90年代の日本の構造調整を民間企業に限って言いますと、投資率を20%から10%に調整していくプロセスの問題と言えます。結果的には、この過大設備投資の是正のプロセスは二段階調整になったと思われます。

 第一段階として91年から94年の間、20%のものが15%に下がりました。これは主として円高のもとで製造業の投資調整が進んだからでした。95年から97年にかけて、数字が反転していますが、これは主として移動電話が自由化され、通信の設備投資が非常に増えたことで、16%という比率に再び上がってきたものです。 97年の暮れから第二段階の調整局面を迎え、今回は主として非製造業の調整過程ということになってくると思います。

 今年上半期、1月から6月までの設備投資は年率20%のスピードで下がってきています。例えば機械受注統計、これは設備投資の先行指標ですが、それによれば、今年の5月以降大体前年比20%を超えるマイナスが進行している訳です。設備投資のGDP比は約15%ですから、設備投資が20%下がることは、それだけでGDPを3%押し下げていることになります。つまり、設備投資の落ち込みだけで成長率はマイナス3%になります。

 しかし、過大投資是正の形で設備投資が落ちているのですから、当然過剰雇用の是正もやらざるを得ません。過剰雇用の是正は失業を増やし、消費を落とし、消費も不況化しますが、先程来言っているように、消費が主役ではありません。設備投資がこのペースで落ちていきますと来年中にはGDP比10%の水準に到達してもおかしくありません。

 次に日本の設備投資が過大であるとはどういう意味なのかについて申し上げます。今設備投資の付加価値に対する割合を計算したものを投資率とします。企業を大企業、中企業、小企業に分けて投資率を見てみると、94年から97年までの3年間の平均で、大企業の投資率は31.1%、中企業が19.9%、小企業が9.6%となっており、大企業の投資率が圧倒的に大きいのが分かります。

 次に、ROE(自己資本利益率-税引き前)を見てみます。国際比較する場合にはこの半分位を使っていただければいいのですが、ここでは、利益率は投資率の逆になっておりまして、大企業が8.8%、中企業が13.0%、小企業が16.8%と逆比例の関係です。

 日本経済の問題は、実は大企業の問題であります。小企業の方は、予想以上に堅実な経営をしているのが特徴です。大企業で言いますと、投資率は高いのですが、利益率は低い、極めて効率が悪い、ここに今の日本の構造問題がございます。この大企業の投資効率が非常に悪いという問題が、金融ビッグバンの下ではっきりと表面化したのが、現在の経済問題だと思っております。

 従来日本の大企業は、マーケットシェアを拡大することが経営の最大の目標でありました。しかし、金融ビッグバンの下で金融市場が国際化するにつれて、はっきりしてきたことは、不効率な投資を続けてROEが下がると、企業の格付けが下がって資金調達コストが上がってしまう、資金調達コストが上がるだけではなく、ひどい場合には資金調達が出来ないという形で、競争から排除される危険性が出てきた事であります。

 この様に日本の企業は投資効率の高い投資だけ、充分高い利益率を維持できる場合しか投資が出来なくなってきているという形で、本格的に国際化してきている、というのが、現在の不況の反対側にある動きです。このように、日本経済は設備投資調整を通じて今非常な勢いで、短期的には非常にネガティブな方向に行っておりますが、中長期的には非常にいい方向に向かっていると言っていいと思います。

 短期的なリスクの問題を申し上げます。日本の問題は、設備投資を中心に不況が加速している中で、世界的なデフレ傾向を迎えたことであります。多分日本は先進国の中で戦後初めて深刻なデフレを経験している国だと思います。日本経済は90年代非常に低迷して、日本政府が有効な対応策を採れなかったために、日本人は知性も考える力も無くなったとの批判が海外から出ておりますが、私は、そういう議論は否定できないものの、非常にアンフェアな議論だと思っております。

 それは1930年代のデフレ以来世界経済はインフレしか経験しておらず、あらゆる経済に対する考え方がインフレをベースにしておりますが、日本は90年代以降世界に先駆けてデフレ問題に直面したわけです。この60年間位デフレに対応する考え方がまったく無いわけで、初めての経験をしている訳ですから、時間がどうしてもかからざるを得ない、もっと言いますと、近い将来、このデフレ問題でヨーロッパやアメリカは、日本をテキストブックにせざるを得ないことになるだろうと、私は考えております。

 そこで現実のデフレ問題になりますと、今年の第二四半期4-6月のことですが、前年比で企業の売り上げが5%下がりました。第三四半期は第二四半期に比べて少し上に上がっているように見えますが、これはちょうど一年前が消費税を3%から5%に引き上げて売り上げが大きく落ちた、そのテクニカルな影響の問題であり、これからもっと落ちて行くはずであります。

  私が最初に申し上げましたGDPの予想から言いますと、99年にはこの数字がマイナス10%位になる危険性が非常に大きい。次に企業利益、経常利益ですが、今年の第二四半期が前年比34%マイナスですけれども、来年は前年比70%とか80%の減益となる危険性が非常に大きいということであります。これがデフレの怖さの問題であります。デフレが企業経営に与える最大の問題は、売り上げが落ちて行くということです。売り上げが落ちて行く過程ではあらゆるリストラの努力があまり有効でないというリスクの問題を伴います。

 そこで結論的に申し上げますと、詳しいことはこの後の質疑応答のところで申し上げますが、こういう状態ではほとんどの企業が倒産の危機に瀕します。特に金融負債の大きさが非常な重圧になってまいります。そこで最終的な解決方法は多分、事業会社の場合は、相当部分の会社が会社更生法を申請して債務の切り捨てを要求することになると思います。

 アメリカで言うチャプター・イレブンに相当する会社更生法の下では、従来の債務が切り捨てられることになります。しかし、もし債務だけが切り捨てられるというのでは、生き延びている企業に対して非常に不公平ですから、多分政策的には、会社更生法を申請する企業はそれぞれの企業の、たとえば、設備の半分を廃棄するというような条件を付けてしかるべきだと思います。

 こういった解決は、日本の企業の不良債務問題と過大設備問題を一気に解決することになります。しかし、こういった債務の切り捨ては、銀行にとってたちまち大変なショックになります。そういう意味では、最近成立しました新銀行法の中で危機に陥った銀行は国有化で危機管理が可能になるということが整備されましたので、国有化の下で銀行も事業会社と同じような不良債権の処理をすることになって行くと考えています。

 このような形で会社更生法と新しい銀行に関する法律との両方がもう少し積極的に活用されますと、日本の90年代に表面化した工業化社会のマイナス問題、つまりバブルの崩壊に伴うマイナス問題が一気に解決されることになります。このような解決しかないと思いますが、これは短期的にはかなりショッキングな解決方法でありまして、その意味では、99年は非常に厳しい年になるだろう。しかし、2000年以降はこういった事を政治が恐れないでやってくれれば、日本経済はサステイナブルな成長に戻って行けるのではないかと思っております。ご静聴感謝します。


質疑応答


 失業率は今後どのくらい悪化しそうですか。


 G5の失業率を比較しますと、一番下が日本で現在4.3%ですが、アメリカとイギリスが4.6%ですので、ほとんど同じ水準になりました。特に92年から93年と比較しますと、非常に大きな変化であります。私は、先ほど申し上げたような経済の状況を考えますと、多分99年中には、8%くらいの失業率になると思います。もう一つ付け加えますと、日本と欧米の失業率の定義には相当の違いがあります。非常に大まかに言いますと、多分日本の失業率を2倍くらいすると、ちょうど今の欧米の失業率と比較可能になると思いますから、8%ということは、欧米では大体16%くらいの水準であると思っております。しかし、そこで日本経済が大変なことになるというリアクションだけをするのはまずい、と私は思っております。先程来言っておりますが、短期的にはこれが悪い事は事実ですが、これは、ある意味では、非常にいいことであります。なぜなら日本の経済では、これから労働力人口が伸びて行く見通しは当分の間まったくありません。従って、今ある既存の産業で可能な限り効率化を図って、労働力を余らせて、これをニュービジネスに吸収する以外に、日本経済の成長はありえないからであります。先程日本経済のどちらかというとネガティブな事を強調しましたが、日本が一番やらなければいけないことは、ニュービジネスをいかに早く育成して成長させて行くかという事でありまして、既存の産業は可能な限りリストラをし、ダウンサイジングをして効率化を図ってゆくことが重要です。整理して言えば、既存産業のリストラ・ダウンサイジングと、ニュービジネスの育成が一緒になって始めて日本経済は成長軌道に回復できる、そういうことになるわけです。



 ご意見に反対がありますので申し上げたいと思います。一点目は日本のエコノミストの中に非常に強く見られる傾向ですが、日本の現状を語る際に必ずアメリカのせいにするという傾向があるということです。日本はG7の一つで、イタリアやフランスもそうですが、アメリカの批判の影響というのはそれほど強くないと思います。しかし日本の場合は絶えず自分たちの問題をアメリカのせいにします。それはなぜでしょうか。
 二番目の質問は大企業が問題の根元であるというお話がありました。ただ三つの例を申し上げるとトヨタ、キャノン、ソニーというのは大変好調であり、しかも安定した優良企業であると言えるわけです。他にもたくさんの企業がありまして不調なところもあるわけですが、これは企業そのものの責任というよりは大蔵省、通産省などの経済政策に原因があったということはあり得ると思います。なぜ80年から90年にかけてのバブルの時代に適切な政策が打てなかった政府の責任を重要視しないのでしょうか。今は大企業の経営者が責められている時代ですが、なぜ政府の経済政策ではなく経営者個人の責任にすりかわっているのでしょうか。


 最初の問題については、二つの条件が満たされればアメリカであれヨ ーロッパであれ日本に対していろんな要求を出す資格があると思います。エコノミストとして申しますと、第一の問題は、日本の問題を到底理解しているとは考えられないということです。二番目の問題は、日本に対する要求が極めて一貫性を欠いているということです。つまりアメリカならアメリカの国内政治とか国内事情をバックにした圧力が余りにも大きすぎるというふうに私は見ております。私は日本が間違っていなかったと言うつもりは全くありません。日本人自体が、日本の90年代の問題を十分理解できなかったことは事実です。しかし、外国の圧力がありますと、外国の圧力のせいにする可能性が出てくるという意味で、日本の改革が遅れてしまうことがあるので、外国は口を出さない方がよろしいと言っているわけです。
 二番目の問題について申しますと、日本のビッグ・ビジネスが非効率だから経営者が悪いとあえて言うつもりはありません。私が言いたいのは、今の日本の構造問題は主として大企業の問題になってしまったということです。日本経済の構造問題は何かと言いますと、工業化社会からサービス経済へ移行する過渡期の問題です。この工業化社会というのは、基本的にはビッグ・イズ・ビューティフルの時代です。サービス社会はスモール・イズ・ビューティフルであるべきです。今日本は、工業化社会のメイン・プレイヤーが小さくなって、サービス経済の下におけるメイン・プレーヤーが多くなっていかなければいけないという方向に動いています。工業化社会というのは大量生産、大量流通、大量消費というのが最も効率的であったわけです。しかし、そういったマスの世界が急速に小さくなってきているわけですから、大企業はそれに対応できないのです。従ってビッグビジネスの中に落伍する企業が多いのは当然です。そのことは先程おっしゃったように、例えばトヨタが非常に効率的な企業であるとすると、トヨタ以外の企業が落伍するリスクが益々大きくなるということであります。最終的には、トヨタのような大企業が少数残って、その他の多数の大企業が消えて、スモールビジネスの方に移行してくれるのが日本経済にとって一番いいことです。製造業の場合、トヨタにしても、ソニーにしても、キャノンにしても、国際競争にさらされている分野にありますから、比較的いい企業はどんどん良くなれるわけですが、電力会社や小売業のような非製造業では国際競争がありませんから、なかなか効率化が進みません。これを早くやらなければいけないということで、私は大企業が問題だと言いましたが、ここまで来ますと、主要な問題は非製造業大企業の問題であると理解しております。そういうことですから、バブルの結果損をしたとか、誰が悪かったとかという議論をするためにビッグビジネスが非効率だということを申し上げたわけではありません。日本の経済のどこを変えていかなければならないかという問題です。



 ビジネスの問題から方向を変えて、日本経済の活性化ということで、住宅部門の自由化について伺いたいと思います。小渕政権下の諮問委員会でも、5年内に日本人の居住スペースを倍増するという話が出ておりますが、これについてどのような効用があると思われますか。


 私は、これはあまり感心しないやり方だと思います。日本が必要なのは改革ですが、改革には原理原則が必要です。たぶん必要な原理原則というのは市場経済の原則だと思います。マーケットが住宅投資が必要なら住宅投資を選択するというふうな仕組みに作り変えるべきであって、住宅投資を政策的に意図的に増やしていくというのは原則に反すると思います。住宅のために特別な減税をやって住宅だけを増やすというのは、市場経済から言いますと必ず後で歪みが生じます。90年代に無理に住宅投資を刺激したために、我々の推計では日本の住宅ストックは4,100万の世帯数に対してだいたい5,000万戸くらいあると思います。従って必要なことは、地価が下がることを食い止めようとせず下がるに任せた方がよい、あるいは住宅減税ではなくて全般的に所得税の税率を下げる方がはるかに効率的であります。



 2000年以降の需給関係や設備投資に関する自立的な回復という点について疑問があります。一つは、輸送機器の投資が非常に落ち込んでいますが、これは海外での投資がたくさん行われているということではないかと思います。実際に供給が外部から来るという状況に鑑みて自立的な調整がこれにどうやって追いついて行けるのかというのが第一の質問です。二番目に、家電分野の半導体の工場などを見ましても海外での生産を引き下げるという状況が進んでいて、日本の中ではなくまず海外でやるということで、日本の経済に於ける調整は遅れるという可能性があるのでしょうか。


 おっしゃるように設備投資を削減することは、必要な条件ですが十分ではありません。先程も申しましたが、既存の設備を廃棄しなければならない。日本の製造業だけで言いますと、平均して30%くらいの過剰設備の廃棄が必要だと思います。処方箋としては会社更正法といった形で過大な債務の切り捨てと同時平行的に進めなければならないと言ったわけです。
 二番目に、海外との関係をどうするかという問題がございます。アメリカとかヨーロッパの場合は、それぞれの地域の市場メカニズムでこの問題はある程度吸収されていくと思います。問題は、アジアに於ける過剰設備の問題です。この問題は、マクロ的に言えば、アジアの現在の危機を解決するにはアジアが抱えている巨大な対外債務を切り捨ててやる必要があると思います。これは先程日本の国内で会社更正法の適用と言いましたが、同じような意味合いでして、債務の切り捨てに貸し手である先進国が応じる見返りに、設備廃棄をある程度受け入れさせる、という条件が必要であると思います。もし、そういうことをしないで、例えば韓国の債務を切り捨ててやるということにしますと、韓国には圧倒的な競争力がついてきて非常にアンフェアな状態になります。しかし、韓国が今抱えている対外債務を返済することは不可能に近いわけですから、債務の切り捨てはどうしても必要です。それにどういう条件を付けて切り捨てる側と切り捨てられる側が妥協できるかということが非常に重要な問題になると思います。



 貿易構造から見ると日本の貿易黒字が拡大しています。それは輸入の減少と解釈されていますが、実際は輸出も増えており、日本ほど外貨を稼ぐ国はありません。それはなぜですか。


 日本の輸出が増えているか減っているかというのは、これを円建てで見るかドル建てで見るかによって変わってきます。円建てでは円安のために増えていますが、ドル建てでは着実に減っています。数量ベースの輸出の動きはドル建ての数字に似ています。私は、基本的には日本の輸出はどんどん落ちていっていると思います。輸出について基本的に問題が無いと思いますのは、97年のGDPに対する輸出の比率は、日本が11.2%でアメリカの11.6%より低く、アジア9カ国平均の46.8%よりはるかに小さいのです。従って日本経済の問題は輸出ではなくて、輸入が少なすぎるという問題です。

 


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